20世紀・シネマ・パラダ
イス
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未完成交響楽
Leise flehen meine
Lieder
監督:ウィリー・フォルスト
(1933年/オーストリア)
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◆ シューベ
ルトの交響曲「未完成」にまつわる物語
若く貧しい助教員で作曲家のシューベルトは、
滞納中の家賃を支払うため、愛用のギターを質草にお金を借りに行った。
質屋の娘エミーは、シューベルトに好意を寄せ、規定以上のお金を貸し出してあげた。 |
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シューベルト 「僕の歌は、楽譜なしに覚えられるから楽譜が売れない
んだ」。
エミー 「お金にならないのになぜ曲を作るの?」。
シューベルト 「他に僕に何ができます?…」。 |
シューベルトはエミーからゲーテの詩集をプレゼントされた。その中に「野ばら
」の一篇が…。 |
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小学校での授業中。算数の時間であるのに、頭に浮かんだ「野ばら」
の楽譜を黒板に書くシューベルト。
♬ 「童は見た
り、野中のばら…」 |
ある日、シューベルトは校長室に呼び出された。クビを言い渡されると思いきや、彼を待って
いたのは宮廷楽長で、シューベルトはウィーン社交界の重鎮であるキンスキー侯爵夫人の夜会に招
待された。
夜会での演奏が好評であれば将来を保証されたも同然。作曲家として世に出る願ってもいないチャンスの到来だった。
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困った事に夜会服は質草となっていた。シューベルトは質草の貸し出しを質屋の親父に断られ
たが、エミーが父親の目を盗み、本人の物よりも立派な夜会服を貸してくれた。
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キンスキー侯爵夫人邸での夜会の日。
立派な夜会服姿で颯爽と現れたシューベルトだが、何と質屋の札が付いたまま…(笑)。
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シューベルトは自作の新曲、ロ短調交響曲のモチーフを演奏。
キンスキー侯爵夫人をはじめ、参列者は皆、シューベルトの音楽に聴き惚れていた。
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第2楽章の演奏が終わり、インスピレーションの湧くままに、第3楽章へ入ろうとしたその時に、突然、若い婦人の甲高い笑い声が会場中に響いた。
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シューベルトは演奏を中断。音楽家としてのプライドを傷つけられ、憤って会場から出て行っ
てしまった…。
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若い婦人はシューベルトの音楽を笑った訳ではなかったが、結果として、シューベルトが演奏
途中で退席したことはキンスキー侯爵夫人の印象を害し、この日の演奏会でシューベルトが世に出ることにはならなかった。
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その後、シューベルトは演奏会の時に掴みかけた第3
楽章のイメージを作曲しようと試みたが、決まって脳裏にあの若い婦人の笑い声が蘇り、どうしても曲を完成することができなかった。
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シューベルトは学校をクビになり、借金取りに追われる日々に…。
彼の事を案じたエミーは、宮廷楽長のところへ行き、シューベルトへの助力を頼んだが相手にされなかった。
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シューベルトは、ハンガリーのエステルハツィ
伯爵の娘たちの音楽教師として、好待遇で迎えられることとなった。
シューベルトは、1年後にエミーと一緒になる約束をして、ハンガリーへと旅立った。
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エステルハツィ伯爵家の姉妹の姉カロリーネは、
夜会の演奏会場で笑い声をあげたあの若い婦人だった。
彼女は、あの日の非礼を詫びたい気持ちから、シューベルトを教師として招いたのだった。
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シューベルトは毎日カロリーネに音楽のレッスンをした。
カロリーネは、いつの日か、夜会で演奏した交響曲を完成させて欲しいとの願いを告げた。
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カロリーネはシューベルトに好意を寄せていた。
シューベルトにも恋心が芽生えたが、身分の違いがあるため、一向に煮え切らない態度を取り続けるしかなかった。
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休みの日。シューベルトは、村の大衆酒場で、カロリーネへの叶わぬ恋に患う気持ちを酒で紛
ら
わせていた。
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そこへ、村娘に扮したカロリーネが現れた。
カロリーネは、自分の気持ちを歌に託してシューベルトに打ち明けた。
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歌い終わったカロリーネは店を飛び出し、麦畑の中へ。シューベルトが後を追った。そし
て…。
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2人の関係は伯爵の耳にも入っ
た。父親に問い詰められたカロリーネは、シューベルトと結婚すると告げた。
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無名の音楽家との結婚など認めることが出来な
い。伯爵はシューベルトを騙してウィーンへ送り返してしまった。
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帰国後のシューベルトの落胆ぶりを心配した友人たちは、エミーに助けを求めた。
エミーは、シューベルトが別の女性に恋してしまったことを察しており、初めは断っていたが、シューベルトへの恋慕に突き動かされて会いに行った。
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シューベルトとエミーは久しぶりに再会した。
そこへ、シューベルト宛に「直ぐに来い」との手紙がハンガリーから届いた。
シューベルトはエミーに別れを告げ、急ぎハンガリーへと旅立った。
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ハンガリーに着いたシューベルトが目にしたのは、カロリーネと他の男性との結婚式だった。
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シューベルトに手紙を書いたのは、カロリーネの妹のマリアだった。
マリアは、姉があの日以来泣き暮らしていたと告げ、姉を許して欲しいと語った。
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シューベルトは結婚披露宴の会場へ向かった。そして、かつてカロリーネが願った通り、ロ
短調交響曲を完成させたので、結婚祝として献じたいと申し出て、演奏を始めた。
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カロリーネの脳裏には、シューベルトとの思い出が次々と蘇ってきた。そして、シューベルト
の演奏があの第3楽章に入ったその時、感極まったカロリーネは泣き崩れ、失神してしまった。
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やがて、意識を取り戻したカロリーネがシューベルトに会いに来た。
カロリーネ 「最初の日は笑いで曲を中断させ、今日は涙で遮ってしまった…」。「あなたは不滅の光をお持ちです」。
彼女はシューベルトの前から立ち去った。
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1人となったシューベルトは、カロリーネに献じるロ短調交響曲の第3楽章以降のページを破り捨て、楽譜の最後のページに次の言葉を書き添えた。
「わが恋の終わらざる如く この曲も終わ
らざるべし」
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シューベルトは、カロリーネとの思い出の地である麦畑へ向かった。
道端に建てられたマリア像を見つめるシューベルト。彼の頭には、「アヴェ・マリア」の旋律が…。
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◆ 主な出演者など
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シューベルト役
ハンス・ヤーライ Hans Jaray ( 1906-1990 )
純粋で繊細な若きシューベルトを巧みに演じたハンス・ヤーライ。TVドラマの脚本家、監督としても活躍し、アメリカ映画『悲愁』(1979年/監督:ビリー・ワ
イルダー)等にも出演した。
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カロリーネ役
マルタ・
エゲルト Martha Eggerth (1912-2013)
本作でも見事な歌声と踊りを披露したマルタ・エゲルト。女優・歌手としてブロードウェイでも活躍した。
2013年12月、101歳で大往生。
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エミー役
ルイーゼ・ウルリッヒ Luise Ullrich (1910-1985)
シューベルトに片思いするちょっと可哀そうなエミーを演じたルイーゼ・ウルリッヒ。女優業の他、小説なども執筆していた。
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・俳優としても活躍したウィリー・フォルストの監督デビュー作。
オーストリアの大作曲家フランツ・シューベルトの若き日々を綴った映画だが、大胆なフィクションであるため、一部のクラシック音楽ファンからは不評を
買ったという。
しかし、映画ファンには支持され、日本でも大ヒットした。 |
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