20世紀・シネマ・パ ラダ イス

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Monsieur_Verdoux

        殺人狂時代
         Monsieur Verdoux
          監督:チャールズ・チャップリン
         (1947年/アメリカ)
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  戦争による大量殺人を批判したブラック・コメディ

 今は亡きアンリ・ヴェルドゥは、 30年務めていた銀行をクビになってから、家族を養うため女性を殺害して金を奪う‟青髭”ごときの生活を送っていたという…。

 北フランスのワイン商クーヴェ家では、新婚旅行に出かけて以来、 3ヶ月間消息の無いセルマの事を案じていた。 Monsieur_Verdoux-1

 その頃、セルマと結婚したパリの家具商ヴァネイことヴェルドゥは南フランスの別荘にいた。 庭の焼却炉からは、この3日間絶えることなく煙が出続けてい た。
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 売出し中の別荘を見学に来たグロネイ夫人が 未亡人と知ったヴェルドゥは猛然とアタックしたが、この時は失敗に終わった。
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 セルマの銀行預金を入手したヴェルドゥは、パリで骨休みをしていたが、金を預けている証券 会社から連絡が入り、損失補てんのため大金を調達しなければ ならなくなった。
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 各地に妻がいるヴェルドゥは3ヶ月ぶりにコルベイユのリディアのもとへ行った。そして、不況で銀行が潰れるとそそのかして預金を下ろさせ、その日の夜に殺害し た。
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 『殺人狂時代』 予告編



 ◆
 主な出演者など

アンリ・ヴェルドゥ
チャールズ・チャップリン
グロネイ夫人役
イソベル・エルソム
Charles_Chaplin Isobel_Elsom

リディア役
マーガレット・ホフマン
妻のモナ役
メイディ・コレル
Margaret_Hoffman Mady_Correll

アナベラ役
マーサ・レイ
若い未亡人役
マリリン・ナッシュ
Martha_Raye Marilyn_Nash

 ・『チャップリン の独裁者』(1940年)から7年ぶりに公開されたチャップリン57歳の時の作品。

 ・なぜ映画の舞台がフランスで、タイトルもフランス語なのかと言えば、主人公のヴェルドゥ にはモデルがおり、その人物が「ガンベの青髭」 ことアンリ・デジレ・ランドリュー (1869-1922)だから。
 * ガンベ  … Gambais  フランスのパリ郊外の地名
 (右の写真)左から、メアリー・ピックフォード、チャップリン、 ウーナ夫人。本作のプレミア試写会時。
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Monsieur_Verdoux-28  ・「ガンベの青髭」ランドリューは、1915年からの4年間で11人を殺害。被害者の1人 は子共だが、あとの10人は中年女性。ランドリューは彼女たちの財産で生計を立 てていた。
 映画の中で焼却炉から煙が出ているシーンがあるが、ランドリューは被害者の遺体を大型ストーブで焼却していたという…。ランド リューはギロチン刑に処せられている。

 ・チャップリンは1942年にオー ソ ン・ウェルズか らランドリューをモデルとした映画の主役を打診されたが断っている。その後、ウェルズに原案料を支払い、自ら脚本を執筆したのは第2次世界大戦の影響だ とされている。単なる殺人鬼のストーリーではなく、戦争による大量殺人を批判するメッセージを込めたブラック・コメディの名作に仕上げた。
 (右の写真)チャップリンとオーソン・ウェルズ(右)
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Monsieur_Verdoux-29  ・チャップリンは、かつての銀幕でのパートナー、エドナ・パーヴィアンスをグロネイ夫人役に起用するつもりでスクリーン・テストを実施 したが、役柄のイメージと違い実現しなかった。
 尚、エドナが結婚式の招待客の1人としてエキストラ出演しているという説もあるようです。

 ・公開当時、チャップリンは‟赤”とのレッテルを貼られていたこともあって興行的には惨敗 し、アカデミー賞においても脚本賞のノミネートだけにとどまった。
 フォードキャプラワイラーヒッチ コックといった名匠たちの戦後第1作目がこぞって公開された前年に比べ、1947年度のハリウッド映画は今一つ見劣り する作品群だった。
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 ・チャップリンへの不当なバッシングがなく真っ当な評価をされていたら、興行面は勿論、賞 レースにおいても、もっと良い成績を得ていたはず。
 日本では1952年(昭和27年)に公開され、キネマ旬報ベスト・テンで、『第三の男』『天井桟敷の人々』といった英・仏映画の金字塔とも言える作品を抑え て、堂々の第1位に選出された。


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