20世紀・シネマ・パラダ
イス
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アラビアのロレンス
Lawrence of Arabia
監督:デビッド・リーン
(1962年/イギリス)
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◆ 映画史に燦然と輝く不朽の名作
1935年、元英軍将校のT・E・ロレンスがオートバイの事故で亡くなった。 |
葬儀には多くの人が参列した。故人を 「並外れた人物だった 」
と称賛する人もいれば、「恥知らずな自己宣伝家だった 」 と酷評する人もいた…。 |
1916年、カイロの英陸軍エジプト基地。考古学を学び、アラビア語に堪能
なロレンス中尉は、軍用地図を作成する任務に就いており、風変りな人物として知られていた。 |
第一次世界大戦が勃発して2年。アラビアでは、勢力を拡大しているオスマン帝国 (現トルコ) に対し、ベドウィン (砂漠の民)
が反乱を起こし始めていた。
英陸軍のマレイ将軍はベドウィンを支援することに消極的だったが、外務省アラブ局のドライデン局長は、ベドウィンを支援してオスマン帝国を牽制することは、背後にいる独軍にくさびを打ち込
むことにもなると考えていた。
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ドライデンから白羽の矢を立てられたロレンスは、陸軍から3ヶ月の暇を与えられ、外務省ア
ラブ局の局員としてアラビアの砂漠に派遣されることになった。ベドウィンの反乱軍の指導者であるファイサル王
子と会い、王子が抱いている展望を探ることが任務である。
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ドライデン 「砂漠を楽しめるのはベドウィンと神々だけだ…。他の者には灼熱地獄
だ 」
ロレンス 「私には楽しみです 」 |
ロレンスはベドウィンのハジミ族の青年タファ
スに案内されて、砂漠の中を何日も旅した。
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井戸がある場所に着いた。タファスによれば、あと1日でファイサル王子の陣営に着くとのこ
とだ。
2人が井戸水を汲んで飲み、小休止していると、遥か地平線の彼方に、こちらに向かって来る人影が現れた。 |
敵か味方か?
2人に緊張が走った。相手の正体が分かるとタファスは銃を向けたが、逆に撃ち殺されてしまった。
相手はベドウィンのハリス族の首長アリだった。
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この井戸はハリス族のもので、ハジミ族が飲むことは禁じられているという。同じベドウィン
でも部族間で対立しているのだ。アリがこの先の案内を申し出たが、ロレンスは断った。「人殺しの友達はいない 」。
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ロレンスはコンパスを頼りに目的地へ向かった。反乱軍の陣営近くまで行くと、ファイサル王
子に随行している英陸軍のブライトン大佐が出迎えに来ていた。
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オスマン帝国軍の戦闘機がアラブ反乱軍の陣営を急襲して来た。敵機が機関銃や爆弾を備えて
いるのに対し、反乱軍はライフル銃と剣だけだ。皆が逃げ惑う反乱軍の中で、ファイサル王子が唯一人、皆を鼓舞していた。
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夜。ファイサル王子の幕舎で会合が開かれた。ブライトン大佐は、兵器の輸送も出来ない砂漠
からは徹底し、英軍の指導で反乱軍を近代化するべきだと進言したが、アリが猛反発した。英国が支援にかこつけてアラブを支配することを危惧しているのだ。
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王子から意見を求められたロレンスは砂漠に留まるべきだと主張した。英国人でありながら
コーラン (イスラム教の聖典)
を熟知し、英軍の方針とは異なる考えを示したロレンスは、ファイサル王子から一目置かれるようになった。
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ロレンスは反乱軍の戦況打開策について一晩不眠で思考し、ある考えに至った…。 |
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ロレンスは、広大なネフド砂漠を横断し、オスマン帝国の要衝であるアカバの港を攻略すると
の考えに至った。ネフド砂漠を横断することはベドウィンでも極めて困難だ。考えを打ち明けられたアリは反対した。
ロレンス 「私に50名の部下を貸せ。ネフド砂漠を横断し、アカバを攻略して見せる 」。
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ロレンスとアリは部下を引き連れてアカバへ向かって出発した。こっそりと後をつけていた2
人の少年ファラジとダウドがロレンスの召使いとなった。
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ネフド砂漠に到着した。水分を補給することが出来ず、20日ほどで横断しなければラクダも
死に絶えてしまう。
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水場まであと半日という地点まで辿り着いた時、ガ
シムのラクダが空になっていた。
アリ 「引き返す余裕はない…。ガシムはもう死んだ。運命だ 」。
しかし、ロレンスはガシムを助けに行くと言う。
アリ 「なぜ我々をここまで連れて来た。アカバはどうするんだ! 」。 ロレンス 「必ず行く 」。
ロレンスはガシムを助けに向かった…。
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アリたち一行は水場に辿り着いた。ダウドがロレンスの帰還を信じて待ち続けていた。
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ロレンスがガシムを連れて戻って来た。アリがロレンスに水筒を差し出した。
ロレンス 「運命などない 」。 アリ 「エル・ロレンス 」 。(* エル … 英雄に対する尊称)
アリは自分の寝床をロレンスに提供した。
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アリ 「自分で運命を切り開く者は英雄だ 」。
ロレンスはアラブの衣装を与えられ、ハリス族の首長の1人として認められた。
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ハウェイタット族の族長アウダが
現れた。アカバを攻略するにはハウェイタット族の協力が不可欠である。
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ロレンスとアリは、アラブ民族のためにアカバを攻略する必要性を訴えたが、オスマン帝国か
ら毎月金を与えられていることもあって、アウダは首を縦に振らない。
ロレンス 「アカバの金庫には大量の黄金がある…」。
アウダの気持ちが変わった。
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夜。アカバの港が見渡せる山中で野営している時に事件が発生した。ハリス族の者がハウェイ
タット族の者を殺してしまったのだ。
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両部族は元々対立感情を抱いている。一触即発の事態を収拾するため、ロレンスは自分が下手
人を処刑すると宣言した。
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下手人はロレンスが命懸けで助けたガシムだった。ロレンスは断腸の思いで引き金を引いた。
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アラブ人たちは通信機器も破壊してしまった。ロレンスはアカバ攻略を報告するためカイロへ戻ると告げた。命懸けで奪取したアカバを英軍に明け渡すことにな
りかねず、アリは動揺したが、現実問題としてアラブ人だけでアカバを死守し
続けることは出来ない…。
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黄金が見つからず怒っているアウダに、ロレンスは10日待てば5000ギニーの金貨を届け
ると約束した。
アウダ 「子供と3人だけでシナイ半島を横断するのか? 」
ローレンス 「モーゼも横断した 」
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ロレンスはファラジとダウドを従え、シナイ半島の西、カイロへ向かった。道中、砂嵐に遭
い、ダウドが流砂にのみ込まれてしまった。
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ダウドを亡くし、ロレンスは意気消沈してしまったが、何とかスエズ運河に辿り着くことが出
来た。
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カイロに着いたロレンスは英陸軍エジプト基地に直行した。薄汚れたアラブの服を着たロレン
スが、ファラジを連れて将校クラブに入ると、ちょっとした騒動となった。
騒ぎを聞きつけ、ブライトン大佐が現れた。ロレンスがアカバを攻略したと報告すると、その場は騒然とした。
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ロレンスは新任のアレンビー将軍と
対面し、アラブでの任務を継続するように命じられたが、自分は適任ではないと固辞した。
ロレンス 「私はアラブ人を2人殺しました…。殺し方が問題です。私は最初の処刑を楽しみました…」
アレンビー 「馬鹿な。君は疲れているんだ 」
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ロレンスの行動は独断によるものだったが、難攻不落とされていたアカバを攻略したことは大
きな戦功だ。ブライトン大佐もドライデン局長もその武勲を称賛し、ロレンスは少佐に昇格してアラブに戻ることになった。
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ロレンス 「アラブ人は、英国がオスマン帝国の後釜になることを危惧しています…」
アレンビー 「政治の事は分からん 」
ロレンス 「閣下の名で、(そのような事は) ないと保証して下さい 」
アレンビー 「保証しよう 」
アカバの港を占領したので兵器の輸送も容易になった。機関銃に野砲、ロレンスが望むものは全て手配すると約束されたが…。
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ブライトン 「大砲まで与えてしまえば、アラブの独立を促すことになってしまいま
すが…」
アレンビー 「約束はいつでも取り消せる。だが、ロレンスは引っ込みがつかない 」
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