20世紀・シネマ・パラダ イス

filmbar
Foolish WIves

     愚かなる妻
     Foolish Wives
     監督:エリッヒ・フォン・シュトロハイム
     (1922年/アメリカ)
filmbar

 
 サイレント期の奇才 シュトロハイムの快作

 モンテカルロ近郊の海岸にそびえ建つ豪邸アモロサ荘に住んでいる3人の自称ロシア貴族。
 伯爵のカラムジン大尉とその従妹オルガ・ペチュ ニコフ公爵夫人。そして、ベラ・ペチュニコフ公爵令嬢
FoolishWives-1

FoolishWives-2
 アモロサ荘ベントゥッチなる男が娘を連れて訪ねて来た。3人はベントゥッチからニセの1,000フラン札を20枚買い求めた。
 メイドを雇い、朝からキャビアを食する贅沢三昧な生活をしている3人だが…。

FoolishWives-2-2
FoolishWives-2-3

 朝刊を読み、米国公使ヒューズ夫妻がモナコに来ることを知ったオルガが、カラムジンにけしかけた。「ヒューズ夫妻と知己になれば疑われずにすむ…。賭博で大儲けして逃げるまでの保証に最適な連中よ…。あなたなら公使夫人に取り入るのは簡単でしょ…」。 FoolishWives-3-2

 ホテルのテラスで読書中(本のタイトルは「愚かなる妻 」)の公使夫人に、カラムジンが取り入った。「ここは危険なところです。詐欺師も多い。よろしければ私がお守りしましょう。ここの事は裏まで知り抜いていま すから…」。
Foolishwives-4-2
Foolishwives-4

FoolishWives-5
 カラムジンたちは思惑通り公使夫妻と知己になり、射撃ゲームやゴンドラ遊覧などに招待した。まだ年若い公使夫人は、色々な遊戯でもてなしてくれるカラムジンに好意を寄せたが、ヒューズ公使は妻の浮かれた様子に戸惑い、カラムジンに胡散臭さを感じていた。

FoolishWives-5-2
FoolishWives-5-3.

 カラムジンとオルガに誘われ、ホテル・ドリーム館へやって来た公使夫人。カラムジンは公使夫人を散歩に誘い出した。 FoolishWives-6-4

 天候が急変し、嵐に見舞われた。土地を知り尽くしているカラムジンは道に迷うのもお手のもの。沼地のほとりにあるガループ婆さんの家へ退避した。びしょ濡れになった服を着替える公使夫人の裸を、手鏡で盗み見るカラムジン…。
FoolishWives-7
FoolishWives-8

FoolishWives-9
 カラムジンは、疲れ果てて熟睡している公使夫人を手込めにしようと迫ったが、嵐で道に迷った神父が宿を求めてやって来たので、公使夫人の貞操は守られた。

 翌朝。カラムジンとオルガが公使夫人を自宅へ送り届けた。道中、オルガが公使夫人に言い含めた。「ご主人にはホテルにいたと言ったほうがいいわよ」 。
 夫人を送り届けた後、オルガはカラムジンに念を押した。「目的は女ではなく、お金だからね」。
FoolishWives-11

 アモロサ荘で働いているメイドのマルーシュカもまた、カラムジンの甘言に騙されている一人。「結婚して伯爵夫人にしてやる」 。
FoolishWives-11-2
FoolishWives-12

 マルーシュカに結婚の事を問い詰められたカラムジン。「本国の土地が売れなくて…今は従妹に養われている始末だ …。私は全てを国に捧げた…」 と語りながら、フィンガーボウルの水をつけた手で顔を覆い、水滴をテーブルクロスに落としてみせた。
FoolishWives-12-3
FoolishWives-15

 カラムジンの思惑通り、水滴を涙だと思い込んだマルーシュカは、20年かけて貯めた 2,000フランをカラムジンに差し出した。マルーシュカが立ち去った後、ほくそ笑みながら札束を数えるカラムジン。
FoolishWives-16
FoolishWives-17

FoolishWives-18
 ある晩、公使夫人はカジノのルーレット賭博で10万フランの大勝ちをした。アモロサ荘でのポーカー大会に参加するという夫を後に残し、自宅へ戻る夫人にカラムジンはメモ書きを手渡した。


 アモロサ荘には多くの招待客が集っていた。彼らは、ここで掴まされる札がニセ札であることを知る由もなかった…。

 カラムジンのメモには、「私の命と名誉を救って下さい」 と書かれていた。心配した公使夫人がアモロサ荘にやって来た。カラムジンは公使夫人を最上階に案内し、部屋で2人きりとなった。マルーシュカが2人の様子を鍵穴から覗き見ていた…。
FoolishWives-20
FoolishWives-22

 カラムジンが涙ながらに語った。「明朝までに9万フラン返済しなければ命を失う…。死ぬ事は何ともないが、私と父の名誉が…」。公使夫人はカラムジンに9万フランを差し出した。 FoolishWives-23

FoolishWives-24
 嫉妬のあまり正気を失ったマルーシュカが、2人の部屋に鍵をかけて火をつけた。その後、マルーシュカは海で投身自殺した。

 カラムジンと公使夫人は逃げ場を失い、バルコニーで助けを求めた。
 駆けつけた消防の救命ネットに飛び込み、2人は一命を取り留めた。
 ベラがカラムジンを皮肉った。「女のハートに火をつけるだけでよかったのに」。
FoolishWives-25

FoolishWives-27
 カラムジンのメモ書きを発見したヒューズ公使がアモロサ荘に乗り込んで来て、カラムジンを殴り倒 した。「ニセ貴族め従妹とやらと一緒にここから立ち去れ」 。

 その日の深夜。大金を手に入れたオルガとベラが夜逃げを計ったが、身元がバレて、刑事たちに御用となった。
 その頃、カラムジンはベントゥッチの娘に夜這いを仕掛けていたが…。
FoolishWives-27-2

FoolishWives-28
FoolishWives-29


  主な出演者など

FoolishWives-35
カラムジン役
 エリッヒ・フォン・シュトロハイム
 Erich Von Stroheim
公使夫人役
 ミス・デュポン
 Miss DuPont

 ・サイレント期の奇才シュトロハイム監督の大作。完璧主義者のシュトロハイムは、ロス近郊の砂漠にモン テカルロの街並を再現したセットを作らせるなど、空前の製作費を投じた。また、細部にまでこだわり、小道具として本物ソックリのフランス紙幣を作らせ、逮捕・連行された、などというエピソードも残している。 Foolishwives-32

Foolishwives-33  ・完成したフィルムは6時間とも8時間とも言われているが、会社 (ユニヴァーサル社)よって、約120分にカットされた。
 シュトロハイムと対峙し、フィルムのカットを命じたのは、後に「神童」と謳われた製作者のアービン グ・G・タルバーグ

FoolishWives-36
FoolishWives-37
シュトロハイム、モード・ジョージ(オルガ役)
シュトロハイム、メイ・ブッシュ(ベラ役)


HOME