20世紀・シネマ・パ
ラダ
イス
◆ 「20世紀の英国映画ベスト100」で第2位に選出された珠玉の一品
ミルフォード駅内の喫茶店。沈痛な面持ちで向かい合っている中年の男女。とそこへ、女性の
知人が偶然に現れた。声を掛けれたローラは、同席の男性は医師のアレック・ハーベイで、彼は来週アフリカへ赴く、と紹介した。 |
アレックが乗るチャレー行の汽車が到着した。彼はローラの肩に手を添え、足早に店を後にし
た。 |
帰りの汽車の中。知人のドリーがお喋りを止めない。ローラは目ま
いがするとことわり、目を
閉じた。 |
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帰宅したローラは口論していた息子と娘を寝かしつけ、居間で夫と
向き合った。何も知らず、いつものようにクロスワード・パズルに興じている夫のフレッ
ド。 |
「数週間前までは幸せな家庭の妻だったのに…」。
ローラはアレックと出会ってからの日々を追想していた…。 |
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木曜日にミルフォードへ買物に出かけるのが習慣となっているローラ。数週間前、駅のホーム
で通過する急行を眺めていたローラの目にススが入ってしまい、それを取り除いてくれたのがアレックだった。
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翌週の木曜日。2人は偶然に街角で再会したが、挨拶程度の立ち話
をしただけで別れた。
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次の木曜日。2人はレストランでまたも偶然に再会した。混んでいたので同席し、お互いに自
己紹介をし
た。アレックも妻子がおり、地元のチャレーで開業医をしているが、木曜日は友人の代診でミルフォードへ来ているとのことだ。
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午後は暇だというアレックは、
ローラの映画鑑賞につきあった。
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駅の喫茶店での別れ際、来週も会いたいとの申し出を受けたローラ
は承諾した。
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ローラがうし
ろ
めたさを感じつつ帰宅すると息子が交通事故に遭っていた。彼女は自責の念にかられたが、幸い息子の怪我は軽いものであった。
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ローラは男性と一緒に映画を
観たと夫のフレッドに告白したが、フレッドは大して気にしていない。 ローラは深刻に考え過ぎていたと思い直した。
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約束の木曜日。礼儀上、ローラはレストランへ行ったが、アレックは現れなかった。ミル
フォード駅でいつもアレックが乗る汽車が到着した時、彼が駅に駆け込んで来た。急な手術があって抜け出せなかったとのことだった。2人は来週再会すること
を約束した。
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再会した2人は映画館へ入ったが、退屈な作品だったので途中で席を立った。公園でボートに
乗ったが、アレックが川へ落ちてしまった。
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番人小屋で靴下を乾かしている時にアレックが愛を告白した。ローラも同じ気持ちであること
を認めたが、自制しな
ければならないと訴えた…。
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…だが、その帰りに2人は駅の地下道で口づけを交わした。
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帰宅する汽車の中。ローラは幸福感に包まれていた。
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夫には嘘をつき、アレックとホテルで食事をしているところ
を友人に目撃もされたが、アレックと会わずにはいられなかった。
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アレックが友人から借りた車で田舎までドライヴした日の夜、留守中の友人宅へ誘われたロー
ラは
何とか思い止まって1人で駅まで行ったが、堪えきれずにアレックのもとへ引き返した。
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2人がキスを交わした時、思いの外早く帰宅してきた家主の足音が聞こえ、ローラは慌てて
裏口から飛び出した。
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屈辱感でいっぱいのローラ。駅へ行けば、後を追って来たアレックと顔を合わすことになる。
ローラは自宅へ電話をかけ、嘘の理由を作って帰宅が遅くなることを告げ、あてもなく町の中を彷徨った。
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終電間際に駅へ行ったローラの前に、2度と会うまいと心に決めていたアレックが現れた。
ローラと同様に自分達の置かれた状況に悩んでいたアレックは、ある決意を抱いていた…。
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『逢びき』 予告編
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◆ 主な出演者など
ローラ役 |
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アレック役 |
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セリア・ジョ
ンソン |
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トレヴァー・ハワード |
・原作はノエル・カワードの戯曲「静物画」。カンヌ国際映画祭でパルム・ドール大賞を受
賞。米アカデミー賞の監督賞、脚色賞、主演女優賞の3部門でノミネートもされ、デヴィッド・リーン監
督の
出世作となった。
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・英国映画協会が1999年に選定した「20世紀の英国映画ベスト100」
で第2位に選出された。
恋愛映画の古典的名作として根強い人気と高い評価を保ち続けている。 |
◆ ピック・アップ … セリア・ジョンソン、トレヴァー・ハワード
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Celia Johnson 1908-1982
(イギリス)
・1928年、舞台女優としてデビューし、33歳の時に短編映画『A Letter from Home』(1941年/監督:キャロル・リード)で銀幕デ
ビュー。
・『逢びき』でニューヨーク映画批評家協会賞の主演女優賞、『ミス・ブロディの青春』(1969年/監督:ロナルド・
ニーム)で英アカデミー賞の助演女優賞を受賞。 |
・英・米の舞台、映画、TVで息長く活躍。1981年に叙勲され、「デイム」の称号を得
た。
・私生活では、007・ジェームズ・ボンドの生みの親イアン・フレミングの兄ピーター・フ
レミングと結婚し、3人の子供を授かった。 |
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『幸福なる種族』
(1944年/監督:デヴィッド・リーン)
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『ミス・ブロディの青春』
(1969年) |
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TVドラマ「遥かなる旅
路」(1980年)で、35年ぶりに共演したセリア・ジョンソンとトレヴァー・ハワード
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Trevor Howard 1913-1988
(イギリス)
・1934年、舞台俳優としてデビューし、『最後の突撃』(1944年/監督:キャロル・リード)の端
役で銀幕デビュー。『逢びき』で人気スターとなり、『第三の男』(1949年)、『八
十日間世界一周』(1956年)、『戦艦バウンティ』(1962
年)、『ライアンの娘』(1970年)、『ルードウィヒ/神々の黄昏』(1972年)、『スーパーマン』(1978年)、『ガン
ジー』(1982年)等、多くの名作、ヒット作に出演。
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・『鍵』(1958年/監督:キャロル・リード)で
英アカデミー賞の主演男優賞を受賞。1982年、CBE勲章を辞退した。
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『第三の男』(1949
年)
バーナード・リー(右)と
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『ライアンの娘』(1970年) |
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