20世紀・シネマ・パラダ
イス
◆ 戦前の日
本で大いに受けた デュヴィヴィエ&ギャバンの代表作
フランス植民地アルジェリアの首都アルジェに、パリから刑事たちが乗り込んで来た。2年
前、
パリで銀行強盗をして大金を強奪し、その際に5人の警官を殺害した大泥棒のペペ・ル・モコを逮
捕しに来たのだ。
ペペの潜伏先はアルジェのカスバと呼ばれる一画。家屋や道路が蜂の巣のように入り組み、街そのものが迷路のようになっている。
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アルジェのスリマン
刑事は、この2年間ずっとペペを見張り、顔見知りにもなっているが、カスバの中で下手に手を出すと自分の命が危ないことを知っており、逮捕
のチャンスを伺っていた。ペペはカスバの暗黒街のボスであり、手下も大勢いて、街の人々からも敬愛されているからだ…。 |
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ペペが手下のカルロ
スとピエロを連れて、闇屋の爺さんの所で盗品の宝石を売りさばいている時、警官が大挙してペペの住処へと向かって
いた。 |
ペペと同居しているジプシーの女イネスは、
警官がペペを捕まえに来ることを知らせに来たレジスにペペの居場所を教えた。
ところが、レジスは警察と内通しており、爺さんの家は警官たちに包囲されてしまった。ペペは警官隊との銃撃戦で手を負傷した。
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ペペは、治療のために立ち寄った店で、スリマン刑事と彼に保護さ
れた観光客のフランス人女性ギャビィと出会った…。 |
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警察はまたしてもペペを取り逃がした。レジスは、ペペが弟のように可愛がっているピエロを
騙して、カスバの外に誘い出す作戦を提案した。
ペペは、警察の捜査から逃れはしたが、この2年間カスバの中から一歩も外へ出られず、近頃はイネスとも口喧嘩ばかりするようになっていた。
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レジスが、母親からの手紙(偽モノ)をダシに、ピエロに近づいた…。
病気の母親に会うために、レジスと一緒にカスバの外へ出かけたピエロが戻ってこないことを知らされたペペは、レジスを軟禁した。
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ピエロの帰りを待つペペは、スリマン刑事の手引きでギャビィと再会した。ペペとギャビィ
は、初対面の時からお互いに惹かれ合っていた…。
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拳銃で撃たれ、瀕死の重傷を負ったピエロが戻って来た。ピエロは復讐のため、レジスに銃口
を向けたが息絶えてしまい、カルロスが代わりに引金を引いてレジスを始末した。
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ピエロが死んで悲嘆に暮れるペペは、昼間から大酒を喰らい、自暴自棄となって、カスバの外
へ出ようと駆け出して行った。カスバの出口には、スリマン刑事から急報を受けた警察が待ち構えていた。イネスがやっとのことでペペに追いつき、ギャビィが
家に来ていると嘘をついて、ペペを食い止めた。
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落ち着きを取り戻したペペが家の外へ出ると、ギャビィが彼を待っていた。2人は酒場の宿で
愛し合った。そんな2人の逢瀬を、スリマン刑事が外から伺っていた…。
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スリマン刑事はペペとギャビィの関係を彼女のパトロンに密告した。ペペと会うため、パトロ
ンの制止を振り切ってカスバへ行こうとしたギャビィの前にスリマン刑事が現れ、ペペは警察との銃撃戦で死んだと告げた…。
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約束の日時にギャビィが現れず、意気消沈しているペペに、カルロスがカスバからの脱出を持
ちかけた。カスバの外へ下見に行くというカルロスに、ペペはギャビィへの手紙を託した。
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カルロスの帰りを待っているペペの所へ、スリマン刑事の手下が現れ、ペペを罠に嵌めようと
したが、ペペは男の嘘を見破った。そして、自分が死んだと思い込まされたギャビィが、10時の船でフランスへ帰国することを知った。
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ペペは、制止するイネスを振り切って港へ向かった。嫉妬したイネスはスリマン刑事を訪ね、
ペペが船に乗ったことを教えてしまった。出航前、ペペはスリマン刑事に逮捕された。
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ペペは最後の頼みとして船を見送ることを許された。その時、甲板にギャビィが現れた…。
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『望郷』 予告編
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◆ 主な出演者など
イネス役
リーヌ・ノロ
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スリマン刑事役
リュカ・グリドゥ
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・戦前の日本で人気の高かったジュリアン・デュヴィヴィエ監督と、同監督に見出されてスターの地位を築いたジャ
ン・ギャバン。2人が組んだ5作目で、コンビの代表作でもある。
日本でも大ヒットして、キネマ旬報ベスト・テンの第1位(1939年度)に選出された。
(右の写真)
ジュリアン・デュヴィヴィエ監督(右)
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・カスバに流れ着き、連れ込み宿の女将になれ果てたかつての人気歌手が、往時のレコードを
聞きながら涙を流す…というシーン。演じたのはフレエル(当時46歳)。10代の頃はミュージック・ホールで最も人気のあった歌手であり、モーリス・シュバリエのパートナーだった時期もあった。しかし、10代の頃から
アルコール依存症で、自殺未遂騒動を起したこともあったという。映画の中で聞くレコードは本人の歌声。実人生そのものの様な役柄を演じている。 |
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『望
郷』でのフレエル |
17
歳の時のフレエル |
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・ジャン・ギャバンも映画スターとなる前はミュージック・ホールの芸人・歌手であり、本作
の中でもシャンソンの歌声を披露している。
(左の写真)『望郷』ジャン・ギャバン
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◆ ピック・アップ … ミレーユ・バラン
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Mireille Balin 1909-1968 (フランス)
・1909年、モナコのモンテカルロ生れ。モデルを経て、1932年に銀幕デビュー。
・『望郷』 、ジャン・ギャバンと再共演した『愛欲』(1937年)の2作品が大ヒットし、当時のフラ
ンス映画界を代表する人気女優の1人となった。
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『愛欲』(1937年)
ジャン・ギャバンと |
『マカオ』(1942年)
早川雪洲と |
・ナチス・ドイツの占領時代にドイツ軍士官の愛人だったことにより、パリ解放後の1944
年に逮捕・投獄された。釈放後の1947年に銀幕復帰したが、1作に出演しただけで引退した。
・1968年、59歳で他界。
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