20世紀・シネマ・パラダ
イス
◆ サイレン
ト期の純愛映画の名作 Never look down - Always look up !
パリのスラム街。下水道清掃人のチコの
夢は、日の当たる地上で働く道路清掃人になること。「ぼくは出来るヤツだからね」と、人差し指を掲げるのがお決まりのポーズ。 |
同じ街に住むダイアンは
、売春婦の姉に、事ある毎にムチで打たれる悲惨な生活をしていた…。 |
ある日、大金持ちの伯父夫妻が、姉妹を引き取ってもよいと訪ねて来た。伯父から、真っ当な
暮らしをしていたかと尋ねられ、正直者のダイアンは返事に窮してしまった。その様子を見て全てを察した伯父は、2人を引き取るのを辞めて帰ってしまった。
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怒った姉はダイアンをムチで打ち、外へ逃げ出した彼女を捕まえて首を絞めた。その時、偶然
に地下から出て来たチコがダイアンを助けた。
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チコは無神論者だ。「神がいるなら何故彼女を護ってやらないんだ?…。
ぼくは2度5フラン出して神を試してやった。1度は道路清掃人にして下さいと。もう1度は金髪の女房をと…。10フラン丸損だ。ぼくは神に10フラン貸し
がある…」。
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その時、そばを通りかかった神父が、チコの話を聞いてやって来
た。神父は道路清掃人の鑑札と、メダイ(キリスト教のメダル)のネックレスをチコに差し出した。「こ
れで借りの半分は返したね…」。
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ダイアンがナイフで自殺を図ったが、再びチコが救った。
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警官がダイアンを連行しに来た。売春の罪で捕まった姉が、ダイア
ンも同罪だと告げ口したのだ。チコは思わず警官に言い放った。「彼女はぼくの女房だ」。
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警官が去った後、チコは頭を抱えた。警察が家に調べに来れば嘘が
ばれ、道路清掃人の仕事も失くしてしまう…。
ダイアン 「私を家に置いたら。済んだら出ていくわ」。
チコ 「君は頭がいい」。
ダイアン 「あなたは心が広いわ」。
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2人は友人のおんぼろタクシーで街を一周してからチコの家へ。チコは階段をどんどん登って
行った。4階、5階 … そして7階へ。チコ 「働いているのは地下だけど、住まいは星に近いんだ」 。ダイアン
「素敵だわ。天国よ」。
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チコの部屋の窓には、隣の建物へ渡れるように板が掛けてあった。
チコはダイアンの手を取って一緒に渡ろうとしたが、ダイアンは怖がって渡れなかった。
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チコ 「下なんか見るな。いつも上を見ろ!」 。「ぼくは上ばかり見
ている。だから出来るヤツなんだ」。
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2人の生活が始まったが、チコは、同居するのは警察の調べが済むまで、と念を押していた。
窓の渡り板の先には、道路清掃人の先輩であるゴバンさん夫妻が住んでいた。チコとの生活で元気を取り戻したダイアンは、怖がっていた板の上を
渡れるようにもなった。
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ついに警察が調べにやって来た。刑事が帰った後、ダイアンは後ろ髪を引かれる思いで部屋か
ら出て行こうとしたが、その背中にチコが声をかけた。「居たければ
居たって構わないぜ」。
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ダイアン 「わたしは神様を信じてるの。あ
なたに会わせて下さった」。
チコ 「神なんか当てにするな。ぼくに任せておけばいい」。
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ある日、チコがウエディングドレスを買ってきた。ダイアンから、
1度でいいから 「愛してる」と言って欲しいと頼まれたチコが、代わりに発した言葉は、「チコ…、ダイアン…天
国」 。
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ドイツと戦争になり、チコは出兵しなければならなくなった。ダイアンはウェディングドレス
を着てチコを励ました。「怖がらないで。上を向いて…。おかげで強くなれたわ。わたしも出来るヤツよ」。
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2人だけで結婚式を挙げ、神父から貰ったメダイのネックレスをお互いの首に掛け合った。時
刻は11時。毎日この時間に会いに来る(=祈りを捧げる)と告げて、チコは出兵した。
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チコと入れ替えで姉がやって来た。ダイアンの幸福を妬む姉はネックレスを奪い取り、ダイア
ンをムチで打った。しかし、チコとの生活で逞しくなったダイアンは、姉からネックレスとムチを奪い返した。
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戦争は長引き、ダイアンは軍需工場で働くようになっていた。工場
勤務の大佐がダイアンに言い寄ってきたが、ダイアンは相手にしなかった。
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毎日11時になると、チコとダイアンはメダイのネックレスを手に祈りを捧げた。祈りの言葉
は、「チコ、ダイアン、天国」。
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戦争4年目のある日、チコは前線で負傷した。チコはダイアンへの
伝言 ー 「愛を込めて…上を向きながら死んだ 」 ー と、メダイのネックレスを戦友に託した。
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工場の大佐が、チコの名前が載った戦死者名簿を持って来たが、ダイアンはチコの戦死を信じ
なかった。「チコは毎日11時に、私のところへ会いに来ている
」。そこへ、神父がチコのネックレスを持って来て、彼の最後の言葉を伝えた。
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戦争の終結が発表され、町はお祭り騒ぎ。ダイアンは1人打ちひし
がれていたが…。
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◆ 主な出演者など
チコ役
チャールズ・ファレル |
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・第1回アカデミー賞で、監督賞、主演女優賞、脚色賞を受賞。
注) 主演女優賞は、『第七天国』、『サンライズ』、『街の天使』 の3作の演技に対して贈られた。
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・フランク・ボーゼージ監督、ジャネット・ゲイナー、チャールズ・ファレルの3人は、『街
の天使』(1928年)、『幸運の星』(1929年)で
も組んだ。
(右の写真) 左から、チャールズ・ファレル、ジャネット・ゲイ
ナー、フランク・ボーゼージ監督
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・淀川長治さんが、「友の会」
で本作の話をしたのを聞いていた永六輔さんが、名曲「上を向いて歩こう」を作詞したという。同曲は 「SUKIYAKI」
というタイトルで、全米でも第1位の大ヒット(1963年)となった。淀川さんがジャネット・ゲイナーに
会った時に、スキヤキに招待して、この話をしたら、ゲイナーは「Wonderful
」と言って、大変喜んだそうです。 |
◆ ピック・アップ … チャールズ・ファレル
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Charles Farrell
1901-1990 (アメリカ)
・1901年、マサチューセッツ州生れ。ポーラ・ネグリ主演の『The
Cheat 』(1923年)にエキストラで出演し、銀幕デビュー。その後、チャップリンの『巴里の女性』(1924
年)等にもエキストラで出演した。
・『戦艦くろがね号』(1926年)で初の主役を務めた。
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・『第七天国』(1927年)の大ヒット
で人気スターに。ジャネット・ゲイナーとは合計12作で共演。"America's Favorite Lovebirds"
「人気者のあつあつカップル」と呼ばれ、サイレント後期からトーキー初期にかけて、大人気の名コンビとして活躍
した。
(右の写真) 『街の天使』(1928年)ジャネット・ゲイナーと
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・劇場用映画への出演は『The Deadly Game 』(1941年)が最後となった。1948年から1953年まで、カリフォルニア州パームスプリングス市の市長を務
め、1950年代はTVで活躍した。
(左の写真) 『幸運の星』(1929年)
ジャネット・ゲイナーと
・1990年、88歳で他界。 |
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