20世紀・シネマ・パラダ
イス
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女だけの都
La Kermesse Heroique
監督:ジャック・フェデー
(1935年/フランス)
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◆ フラマン
派の絵画から抜け出したような人物達が織りなす喜劇
1616年。フランドルのボーム村は、明日のカーニバルの準備で賑わっていた。
村長の娘シスカは、うわの空で家事も手につかなかった。何故なら、恋人の画家ジャンが、
父親(村長)に結婚を願い出る日だからだ。母親(村
長夫人)
は若い2人を陰ながら応援していた。
その頃、ジャンは、正装した村長ら村の役人たちの絵を描いていた。 |
シスカに想いを寄せている肉屋(村
の首席助役)が、ジャンより先に結婚を申し込み、村長は
家畜の売買契約と引き換えに結婚を承諾してしまった。肉屋と結婚させられる事を知ったシスカは、泣きながら母親に報告した。 |
夫の魂胆 - 肉屋に嫁がせれば家畜が売れる - が
お見通しの夫人が猛抗議。夫婦が言い争っている時に、馬に乗った3人の騎士が村へ乗り込んで来た。 |
騎士の1人が村役場に入り、封書を投じた。3人の騎士がスペイン人だと聞いて怯えている村
長
を、夫人が皮肉った。「名誉に危険はつきもの。光栄ね。最初に捕まるのは村長よ」。
封書によると、スペイン国王の特使として、オリバレス公が軍を率いてボーム村に一晩滞在す
る
とのことだ。 |
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かつて、この村はスペイン軍に略奪の限りを尽くされたことがあった。今度も、村は焼かれ、
女達は犯され、役人は拷問されて皆殺しにされるだろうと、
村の役人たちは恐れおののいた。 |
村長が一計を案じた。自分が急死したことにして、村の男たちは喪に服して家の中に閉じ篭っ
てしまおうというのである。 |
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男たちの意気地なさに呆れた村長夫人は、女のやり方でスペイン軍を迎えようと呼び掛け、村
の女たちは一致団結した。シスカとジャンが塔に登り、見張りをした
。
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いよいよスペイン軍がやって来た。喪服に着替えた村の女たちが、オリバレス公率いるスペイ
ン軍を出迎えた。
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村の女たちは、まずはビールでスペイン軍をもてなした。一方、家に閉じ篭った村の男たち
は、
窓からその様子を眺めていた。役人 「女房が男と喋っている」。村長 「うちの女房は?」。役
人 「公爵殿下と 」。村長 「ま
あ、相応しいかな 」。
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村役場で役人たちの絵を見たオリバレス公の一行。「初めて男を見た」。スペ
イン軍の司祭が
一言。「不細工な男たちだ。この国の女性たちがお気の毒だ」。
恐れていたスペイン軍は皆礼儀正しかった。村の女たちは、自分の好みの男性を自宅に泊めたがった。
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村長宅
に宿泊することになったオリバレス公が、村長の遺体を表敬訪問。村長は勿論死んだふり。オリバレス公が村長夫人に言葉をかけた。
「どうぞ泣きたいだけお泣きなさい 」。村長夫人 「死んでよかった。死は時には残された者にとって恵みですわ」。
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村長宅では、オリバレス公を囲んでの晩餐会。村の宿場の食堂では、スペイン軍兵士たちが飲
ん
で歌って踊っての大騒ぎ。宿場の主人は、スペイン軍の虐殺を恐れていた村の役員だが、「商売繁盛。まさに軍隊様々だ」
と上機嫌。自分の妻がスペイン軍のお偉方と散々浮気をしていたとは露知らず…。
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村長は部屋から出られず、空腹の上、秘蔵のワインをスペイン人に飲まれてしまい大いに嘆い
て
いた。
オリバレス公の侍従のペットの猿が村長の部屋へ紛れ込み、後を追ってきた侍従は、村長の死が
嘘だったことを知った。侍従 「殿下に申し上げれば、縛り首だ」。村長 「50カロル払う」。侍
従 「縛り首だ」。村長 「100カロルでは 」。侍従 「……
」。村長「では200カロル払う」。侍従 「よろしい」。踏んだり蹴ったりの村長。
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村長からまんまと200カロルを巻き上げた侍従だが、司祭に感づかれ、100カロルを横取
りされてしまった。
その頃、シスカとジャンは身の上の不幸を嘆き悲しんでいた。
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村長夫人はオリバレス公に口説かれ、危うく身も心も委ねそうになったが何とか踏みとどま
り、シスカとジャンの結婚式を挙げてくれと頼んだ。オリバレス公は快諾し、村長夫人は首席助役の肉屋に結婚の手続きを命じた。
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慌てた肉屋と村長が大声で抗議したため、廊下にいたオリバレス公は、村長の死が芝居だっ
たことに気付
いた。だが、賢明なオリバレス公は知らぬふりをしたまま、シスカとジャンの結婚式
を執り行った。
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深夜。妻がオリバレス公の寝室へ行ったとの報告を受けた村長は、手に槍を持ち、肉屋と2人
でオリバレス公を討ちに向かった。ところが、妻は隣の子供部屋で赤ん坊をあやしていた…。
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翌朝。兵士集合の合図の太鼓が鳴り響き、村の各戸では、スペイン兵と村の女たちが別れを惜
し
んで
いた。
村を去るスペイン軍を、村の女たちが総出で見送った。馬上のオリバレス公は、バルコニーにいる村長夫人に別れの合図を送り、村長夫人も手を振って
応えた。
スペイン軍が去った後、村長夫人は村人たちに向かって重大な発表をした…。
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◆ 主な出演者など
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村長夫人役 … フランソワー
ズ・ロゼー
村長役 … アンドレ・アレルム
オリバレス公 … ジャン・ミュラ
司祭役 … ル
イ・ジューベ
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・舞台となったフランドルは、現在のフランス北部、オランダ南部、ベルギー西部にかけての
地域。日本では「フランダース」
と呼んだ方が馴染み深いかも。映画の英題は「Carnival in Flanders」。 |
・登場人物の画家ジャンは、実在した画家ヤン・ブリューゲル(子)をモデルとしており、オ
リバレス公も実在した人物。 |
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◆ ピック・アップ … フランソワーズ・ロゼー
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Francoise Rosay
1891-1974 (フランス)
・1891年、パリ生れ。パリのコンセルヴァトワール(国立高等演劇学校)卒業後、舞台俳優となり、短編映画『Falstaff 』(1911年)で銀幕デビューした。
1917年、映画監督のジャック・フェデーと結婚。夫の作品
『外人部隊』(1933年)、
『ミモザ館』、『女だけの都』(1935年)等に出演。夫婦でフランス映画黄金期の一翼を担った。 |
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『外人部隊』(1933
年) |
『ミモザ館』(1935年) |
・その他、
『ジェニイの家』(1936年/監督:マルセル・カルネ)、『舞
踏会の手帖』(1937年/監督:ジュ
リアン・デュヴィヴィエ)等に出演。英語、ドイツ語も堪能で、早い時期から国
際的に活躍し、生涯で100本以上の映画に出演した。 |
・1974年、82歳で他界。
「100歳までは生きたくない。品がないもの」 との言葉を残した。
(右の写真)夫のジャック・フェデー監督と |
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