20世紀・シネマ・パラダ
イス
◆ イタリ
ア・ネオレアリズモの代表作
戦後のローマ。失業中のアントニオは
運良く職安から市役所の仕事を紹介されたが、その仕事に就くには自転車が必要だった。困ったことに自転車は質屋に入れてある。町には失業者が溢れており、
このままでは仕事は他人に渡ってしまう…。 |
事情を聞いた妻のマリアがシー
ツ6枚を質に入れ、その金で自転車を取り戻す事が出来た。 |
アントニオは市役所を訪ね、制服を渡された。明日から仕事だ。帰宅途中、マリアが占い師の
ところへ立ち
寄った。「占いなどイカサマだ」。アントニオは妻をたしなめた。 |
翌朝。6歳になる長男のブルーノが、
誇らしげに自転車を磨いていた。
|
アントニオの仕事はポスター貼り。先輩に要領を教えてもらい早速仕事に就いた。梯子に登
り、ポスターを貼っている時、何者かがアントニオの自転車に乗って走り去った。 |
「泥棒 ! 」
。アントニオは後を追ったが逃げられてしまった。途方に暮れるアントニオ…。 |
|
警察署へ行ったが、「自分で探せ」
と言われてしまった。アントニオは友人のバイオッコを訪ね、助けを求めた。ブルーノから事情を
聞き、心配したマリアも駆
けつけて来た。バイオッコは盗品が売り出される可能性が高い広場を探そうと助言してくれた。
|
翌日。広場では何百台もの自転車が売り出されていた。アントニオは血眼になって探したが自
転車は見つからない…。
|
別の広場へ向かう途中で雨が降り出し、広場は店じまいとなってしまった。
|
雨宿りをしていたアントニアは犯人らしき男を見つけたが、またも逃げられてしまった。
|
ア
ントニオは犯人らしき男と会話をしていた老人の後を追って教会へ入り、老人を連れ出そうとした
が、ちょっとした隙に逃げられてしまった。
|
|
「パパが甘いからだよ」。咎められたアントニオは思わずブルーノの頬を殴っ
てしまった。
機嫌を損ねてしまったブルーノにアントニオが声を掛けた。「ピザでも食うか」。ブルーノは笑顔で頷いた。
|
2人はレストランでワインとチーズを注文した。ブルーノと同じ年頃の子がいる隣のテーブル
には次々と料理が運ばれていた。アントニオはブルーノに語って聞かせた。「あれだけ食べるには自転車が必要なんだ…」。
|
アントニオは藁にもすがる思いで占い師を訪ねたが、「すぐに見つかるか、ずっと見つ
からないかのどちかだ」と、期待外れの言葉しか得られなかった。
|
落胆し、外へ出たアントニオの前を犯人らしき男が通り過ぎた。アントニオは逃げた男を捕ま
えて問い詰めたが、男の顔見知りである界隈の住民たちが現れ、アントニオは取り囲まれてしまった。
|
ブルーノが機転を利かせて警官を呼んで来たのでアントニオは難を
逃れた。
|
|
父子は警官と一緒に男の
家
を調べに行ったが、自転車は見つからなかった。警官に「証拠もない、証人もいないではどうにもならない」
と言われ、アントニオは住民たちの罵声を浴びながら立ち去った。
|
|
打ちひしがれ、道路に座り込むアントニオとブルーノ…。
|
|
『自転車泥棒』 予告編動画
|
◆ 主な出演者など
マリア役
リアネーラ・カレル |
|
|
|
・イタリア・ネオレアリズ
モを代表する1作であり、最もポピュラーな作品。 |
・彫刻家・画家で作家でもあったルイジ・ベルトリーニが1946年に発表した同名の小説
を、デ・シーカ監督と名コンビだったチェーザレ・ザヴァッティーニ等が脚色。
米アカデミー賞の特別賞(現在の外国語映画賞)を受賞した。
(右の写真)左から、デ・シーカ監督、ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタヨーラ |
|
|
・『靴みがき』(1946年)が米アカデ
ミー賞の特別賞を受賞する等、既に国際的な名声を確立していたデ・シーカ監督だが、依然として製作資金の調達に苦しんでいた。そ
んな折、ハリウッドの製作者デビッド・O・セルズニックから資金援助の申
し出があったが、その条件が主役にケーリー・グラントを起用することだったため、デ・
シー
カ監督は断ったという。
(左の写真)デ・シーカ監督(中央)、ランベルト・マジョラーニ(右) |
・演技の経験が無い素人がキャストされた。ランベルト・マジョラーニは電気工場の労働者
だった。エンツォ・スタヨーラは町でデ・シーカ監督にスカウトされた。ジャーナリストだったリアネーラ・カレルはデ・シーカ監督にインタビューをしたこと
が
きっかけで起用された。
(右の写真)デ・シーカ監督、エンツォ・スタヨーラ |
|
|
・ランベルト・マジョラーニは撮影後に元の職場である工場に戻ったが、映画出演で沢山稼い
だだろうとの理由で真っ先に解雇されたという。その後、本格的に俳優となったが、めぼしい役に就くことが出来なかった。
リアネーラ・カレルも女優を続けたが大きな成功を収めることが出来なかった。
(左の写真)ランベルト・マジョラーニ、リアネーラ・カレル |
・マカロニ・ウエスタンの巨匠となるセルジオ・レオーネが助監督を務めており、アントニオ
とブルーノが雨宿りする場面で神学生の1人として出演もしている。
・アントニオが壁に貼るポスターに描かれている女優はリタ・ヘイワース。(右の写真) |
|
|
・映画のラスト・シーンで、デ・シーカ監督は敬愛するチャップリンにオマージュを捧げているとされている。
(左の写真)チャップリン(左)、デ・シーカ監督(1952年)
|
|