20世紀・シネマ・パラダ
イス
◆ 夫は人殺し?…、次は私?…。ヒッチコック監督の心理サスペンスの傑作
良家の娘リナ・マクレイドロウは、
身持ちが固く、浮いた話の1つもない。その事で彼女の両親も気を病んでいた。
そんなリナが、社交界の人気者ジョニー・アイガースと列
車の中で知り合い、交際を始めた。 |
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リナの父
親は、ジョニーがプレイボーイでイカサマ師だとの評判を聞いており、交際に反対したが、かえってリナの恋心を膨らませていった。 |
リナとジョニーはパーティー会場で1週間ぶりに再会した。2人は会場を抜け出し、彼女の自
宅へ向
かった。
ジョニーは、リナの父親の肖像画の前で、自分は評判通りの男だがそれでも良いかとプロポーズした。 |
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リナは両親には黙って家を出て、ジョニーと結婚した。新婚旅行でヨーロッパ中を廻った後、
ジョニーが用
意していた豪華な新居へ移り住んだ。ところが、ジョニーは無一文で友人から借金をしていたのだった。ジョニーはリナに諭され、従兄の経営する不動産会社で
働くことになった。 |
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ジョニーの友人ビーキーが、暫
らく2人の新居に滞在することになった。そんなある日、リナの父親から結婚祝いとして贈呈された骨董品の椅子をジョニーが無断で売り払ってしまい、リナは
ショックを
受けて落ち込んでしまった。
数日後、賭け事で大勝ちしたジョニーが椅子を買い戻し、もうギャンブルはしないと誓ったことで、リナは元気を取り戻した。
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ジョニーを競馬場で見かけたと知人から聞いたリナは、ジョニーの勤め先へ行き、社長で
ある彼
の従兄から思わぬ事実を聞かされた。ジョニーは会社の金を横領し、6週間も前に解雇されていたのだ。従兄は、返済の機会を与えるために起訴はしないと語っ
た。
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リナが離婚を決意した矢先に、彼女の父親が急死したとの報せが届いた。
後日、遺産分与が発表されたが、ジョニーが期待していた程ではなかった。
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ジョニーは、ビーキーから資金提供を受けて、海岸沿いの土地を開発する計画を立
てた。リナは2人の考えが浅はかだと諭したが、ジョニーは聞く耳を持たなかった。
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しかし、土地の地質が良くないと知って計画を諦めたジョニーは、ビーキーを納得させるた
め、土地を見に行こうと誘った。その時、リナの頭にジョ
ニーがビーキーを断崖から突き飛ばし殺害するのでは? との疑念が浮かび、その場で卒倒してしまった。
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リナの疑念は杞憂に過ぎなかった。
ビーキーは資産を保全するためにパリへ行くことになり、途中のロンドンまでジョニーが同行する
ことになった。
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2人が出かけた翌日、警察の人間がリナを訪ねて来た。ビーキーがパリで急死したのだ。酒場
で一緒にいた英国人がビーキーにブランデーを飲ませ、発作
を起こして死亡したとのことであった。
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ジョニーはビーキーがブランデーを飲むと発作を起こすことを知っている…。まさかジョニー
が殺したのでは…?
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リナは同じ町に住む友人の女流作家を訪ねた。殺人推理小説の名手であり、ジョニーも彼女の
作品の愛読者である。
作家の話によると、ビーキーの事件と同じような事例が過去にあり、その裁判記録はジョニーに貸し出しているとのことだった…。
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リナはジョニーの書斎に入り、裁判記録を探した。そして、ジョニーがリナの生命保険につい
て調査していることを知った…。
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リナとジョニーは女流作家宅での晩餐会に招かれた。検死官である作家の弟も同席していた。
ジョニーは毒殺について熱心に質問をしていた…。
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ジョニーに対する疑念から寝不足の日が続いていたリナは、帰宅してから倒れてしまった。
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ジョニーに呼ばれ、女流作家と検視官の弟が見舞いに来ていた。作家の話によると、ジョニー
は再び彼女を質問攻めにして、証拠の残らない毒薬の秘密を白状させたという…。
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その日の夜遅く、ジョニーが寝室にミルクを運んできた。もしやこのミルクの中に…。リナは
ミルクを口にすることが出来なかった。
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リナは体調不良を理由に、暫らく実家へ戻ると告げた。ジョニーは気分を害したが、自分が車
を
運転して実家まで送ると言い張った。
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断崖絶壁の危険な道に差しかかったが、ジョニーはスピードを上げていった。リナは恐ろしく
なり、思わず悲鳴をあげた。
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車が急停止するとリナは逃げ出したが、ジョニーに追いつかれてしまった…。
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『断崖』 予告編
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◆ 主な出演者など
・原作は推理小説作家アントニー・バークリーが、フランシス・アイルズ名義で1932年に
出版した「レディに捧げる殺人物語」。小説の映画権を取得したRKO社は、ジョージ・サンダース、
アン・シャーリー主演のB級(低予算)映画として企画していたが、‟サスペンス映画の神様”アルフレッド・ヒッチコックが監督をすることになり、予算が倍増され、既に完成し
ていた脚本は別人(その1人はヒッチコック夫人のアルマ・レヴィル)によって書き直された。
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・ジョーン・フォンテインは、かつてRKO社の専属女優だったので、RKO社は自社がお払
い箱にしたジョーン・フォンテインをデビッド・O・セルズニックから借り
るために高額な料金を支払った。
ケーリー・グラントはヒッチコック作品に初出演。以後、同監督のお気に入りの俳優となった。
(左の写真)本作撮影時。左から、ジョーン・フォンテイン、ケーリー・グラント、ヒッチコッ
ク監督
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・ケーリー・グラント扮するジョニーがミルクを運ぶシーンでは、ミルクの中に電球を入れて
白
く輝かせることで、「毒入りでは?」という不気味さを強調させて見せた。
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・アカデミー賞では、作品賞、主演女優賞、作曲賞でノミネートされ、ジョーン・フォンテイ
ン
がオスカーを獲得。ヒッチコック監督作品での唯一のアカデミー賞受賞俳優となっている。
(左の写真)アカデミー賞授賞式でのジョーン・フォンテイン。主演男優賞のゲーリー・クーパーと
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◆ ヒッチコック監督 お約束のカメオ出演シーン
映画の中盤、郵便ポストに手紙を入れる男として出演。かなり地味な出演だが、その分?
ヒッチコック監督の飼い犬が活躍。ケーリー・グラント扮するジョニーがギャンブルで大勝ちして購入したペットとして登場。尚、この可愛らしい犬の名前は
「ジョニー」だったという。
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ヒッチコック監督のカメオ
出演シーン
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ケーリー・グラン
ト(左)、ナイジェル・ブルースと「ジョニー」
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