20世紀・シネマ・パラダ
イス
◆ 批評家た
ちに‟めまい”をおこさせた? ヒッチコックの傑作ミステリー
サンフランシスコの刑事ジョン・ファーガソンは、
犯人追跡中に同僚を屋根の上から転落死させてしまった事故が原因で高所恐怖症となり、警察を辞職した。 |
ある日、ジョンは大学時代の友人ケビン・エル
スターから彼の妻の見張りを依頼された。聞けば、夢遊病者のような不審な行動をとるという。ジョンは乗り気でなかったが、エルスターの妻マデリンの美貌に惹かれ、彼女の見張りを開始した。 |
マデリンは、‟カルロッタ”という19世紀の人物の墓参りをした後、美術館で‟カルロッ
タ”の肖像画を長いこと眺めていた…。 |
ジョンは、女友達ミッジの知人
で当地の歴史に詳しい書店主を訪ね、‟カルロッタ”についての話を聞いた。
‟カルロッタ”は大金持ちの妾だったが、捨てられたうえに子供を取り上げられ、自殺した…との事だった。 |
ジョンはエルスターにマデリンの行動を報告した。エルスターが言うには、‟カルロッタ”は
マデリンの曾祖母だが、マデリンはその事を知らず、全て無意識で行動しているのだという。
‟カルロッタ”の霊が取り憑いたのか?。ジョンは半信半疑なが
らも見張りを続けた。 |
マデリンはこの日も‟カルロッタ”の肖像画を眺めていた。そして、サンフランシスコ湾で車
を止めると、海へ身を投じた…。 |
ジョンは自宅でマデリンを介抱した。彼女は海辺へ行ったのは覚えているが、その後の事は記
憶にないという。
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知己となったジョンとマデリンは森へドライブした。暫らくするとマデリンが変調をきたし始
め、まる
で‟カルロッタ”になったかのようだった。マデリンは自分に怯え、ジョンに助けを求めた。いつしか2人の間に愛が芽生えていた。
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ジョンはマデリンが夢に見たというスペイン風の村へ彼女を誘った。そこへ行けば何かが分か
るかもしれない…。
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村に着くとマデリンが変調をきたし始めた。「愛している…。でも遅すぎた」。
彼女は鐘楼を駆け登り始めた。
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ジョンは後を追ったが、高所恐怖症のため立ちすくんでしまい追いつくことが出来ない。ジョ
ンは彼女が飛び降りるの止めることが出来なかった。
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マデリンの死は法廷で自殺と評決された。エルスターは欧州へ旅立つと言ってジョンに別れを
告げた。
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ジョンは愛するマデリンを守れなかったショックで精神を病み、療養所に入院させられた。
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退院したジョンはマデリンとの思い出の場所を訪ね歩いていた。ある日、彼はマデリンによく
似た女性を見かけ、その女性ジュディ・バートンと交際するようになったが…。
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『めまい』 予告編
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◆ 主な出演者など
・原作は、『悪魔のような女』(1955年/監督:アンリ=ジョルジュ・クルーゾー) の作者であるフラ
ンス人作家ピエール・ボロワーとトマ・ナルスジャックのコンビが1954年に出版した小説「死者の中から」。小説では物語の舞台がパリになっている。 |
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・マデリンとジュディが同一人物だという事は、小説では最後の最後に明らかにされるが、映
画ではジュディが登場して間もなく、彼女が手紙を書くシーンで種明かしされる。
これはヒッチコック監督のアイデアで、その方がヒロインの葛藤が観客に伝わるとの考えだった。しかし、ヒッチコック監督自身、この展開にすることに迷いが
あったらしく、編集の段階で一度は手紙を書くシーンをカットさせた。最終的にこのシーンが入れられたのは、パラマウント社の当時の社長バーニー・バラバン
の判断だったらしい。
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・幻のラスト …
欧州へ渡ったケビンが妻殺しの犯人として警察に追われているとのラジオ放送をミッジが聞いているシーンが念のため撮影されていた。というの
も、殺人犯が何のお咎めも受けない展開は、当時の映画製作倫理規定(所謂ヘイズ・コード)に抵触するから
だった。映倫規定は10年後の1968年に廃止されだが、このエピソードからも、既にその意義を失いつつあったことが窺い知れる。 |
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・ヒロインは、ヒッチコック監督の前作『間違えられた男』(1956
年)に引き続きヴェラ・マイルズが
演じる予定だったが妊娠したため降板。
コロンビア社の専属女優だったキム・ノヴァクがパラマウント社に貸し出されて出演したが、その際、彼女の次作にジェームズ・ステュアートが出演するとい
う条件が付けられ、2人は『媚薬』(1958年/コロンビア社)で再共演した。 |
・作品が公開されると賛否両論。否定的な批評の方が多く、興行成績もヒッチコック作品とし
ては低い方で失敗作と見なされ、アカデミー賞においても美術賞と録音賞の2部門でのノミネートにとどまった。 |
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しかし、年が経つにつれ、その評価は高まる一方。英国映画協会発行の「Sight
& Sound 」誌が、1952年から10年毎に発表している「史上最高の映画」
において、11位(1972年)、7位(1982年)、4位(1992年)、2位(2002年)
と順位を上げ、2012年は第1位に選出された。(左の写真)左から、ジェームズ・ステュアート、キム・ノヴァク、ヒッ
チコック監督 |
『めまい』が「史上最高の映画」?。本作は批評家たちにも‟めまい”をおこさせるのかな?
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◆ ヒッチコック監督 お約束のカメオ出演シーン
・映画が始まって約10分後、ジョン・ファーガソンがケビン・エルスターの会社を訪ねる場
面で通行人として出演。
(右の写真)ヒッチコック監督のカメオ出演シーン |
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