20世紀・シネマ・パラダ
イス
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太陽がいっぱい
Plein soleil
監督:ルネ・クレマン
(1960年/フランス・イタリア)
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◆ アラン・ドロンの人気を決定づけたサスペンスの名作
ローマの街角のカフェで談笑している2人のアメリカ人青年 … 大富豪の御曹司フィリップと貧しい育ちのトムは学生時代の友
人だ。
フィリップは放蕩生活を送っており、トムは彼をアメリカへ連れ戻せば、フィリップの父親から5,000ドルの報酬が支払われる契約でイタリアへ来てい
た。 |
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ローマで遊んだ2人はナポリ近郊の漁村モンジベロの家に帰った。そこにはフィリップの恋人
であるマルジュが待っていた。
フィリップは帰国する気などさらさらなく、トムは5,000ドルの契約を打ち切られてしまった。
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3人はフィリップのヨットに乗って、友人のパーティーが開催されるタオルミナへ向かった。
トムは、フィリップとマルジュが愛し合う間、小型ボートに乗せられて放り出される等、屈辱的な扱いを受けた。
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トムはフィリップに対して愛憎相半ばする感情を抱いていたが…。
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フィリップ 「あの時、俺を殺したいと思ったろ?
」 トム 「今度じゃないが、前に2度ほどね 」
フィリップ 「それで預金の明細を? 殺して横領か? 」 トム 「お見通しだね 」
フィリップ 「上手くいくかな、すぐ捕まるぞ 」 トム 「大丈夫さ、僕はこう見えても頭が切れる 」
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トムが仕掛けておいた小細工が功を奏し、フィリップとマルジュは大喧嘩をして、マルジュは
ヨットから降りた。
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フィリップとトムの2人だけになった。フィリップはトムが本気で殺意を抱いていると察し、
トランプ・ゲームでわざと負けて2,500ドルを支払おうとしたが、トムは取り合わない。「2,500ドルなんてはした金だ…。全財産頂く…」
。
トムは隠していたナイフでフィリップを刺し殺し、死体を海中へ沈めた。
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トムはモンジベロに立ち寄った後、ローマへ出た。そして、フィリップに成りすますため、パ
スポートを偽造し、フィリップのサインの筆跡を習得した。
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次に、トムはフィリップの声音を真似てマルジュに電話し、フィリップのタイプライターで手
紙を作成することで、フィリップがまだ生きていると思い込ませた。
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トムはフィリップとしてローマでアパートを借りたが、ヨット会社に住所を教えたため、フィ
リップの友人のフレディが訪ねて来た。予期せぬ来訪者に動転したトムは、フレディをも殺害した。
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フレディ殺しの捜査で警察がアパートにやって来た。トムは間一髪のところで屋上から逃避
し、銀行でフィリップの預金からほぼ全額の1,000万リラを引き出した。
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トムはホテルにチェックインし、刑事たちがいることを承知の上でアパートに電話を入れた。
暫らくすると、案の定、刑事がホテルに訪ねて来た。
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翌日。トムはフレディの死体検分のため警察署を訪れ、マルジュと再会した。トムは女刑事が
聞き耳を立てている事を承知の上でマルジュに語りかけた。「実は、今朝フィリップに会った…。彼はモンジベロに向かった…」。
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トムはモンジベロの家に先回りし、フィリップの母親宛の遺書を作成した。「ママ、僕
は自殺します…。全財産は愛するマルジュに捧げます」 。
マルジュと彼女を尾行している刑事たちがやって来た。トムは1,000万リラを残したまま家から飛び出した。
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皆がトムに騙された。警察もフィリップがフレディを殺したことを苦にして死を選んだと結
論づけたようだ。
トムは事件のほとぼりが冷めるのを待ってモンジベロへ向かった。マルジュは初めうちは心を閉ざしていたが、トムが言葉巧みに口説
き、2人は愛し合う仲となった。トムは全てを手に入れた。完全犯罪は成就したかと思えたが…。
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『太陽がいっぱい』 予告編動画
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◆ 主な出演者など
・若い映画監督たちによるヌーヴェルヴァーグ運動の真っ只中にあったフランス映画界におい
て、既に巨匠の地位を確立していたルネ・クレマン監督が、ポール・ジェゴフ
(脚本家)、アンリ・ドカエ (カメラマン) といったヌーヴェルヴァーグ世代のスタッフと組んだ野心作。
(右の写真) 左から、モーリス・ロネ、マリー・ラフォレ、アラン・ドロン
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* ポール・ジェゴフ … クロード・シャブロル監督の
『いとこ同志』 (1959年)の台詞、『二重の鍵』 (1959年)の脚本を執筆。
* アンリ・ドカエ … ルイ・マル監督の 『死刑台のエレベーター』
(1958年)、クロード・シャブロル監督の 『いとこ同志』 (1959年)、
フランソワ・トリュフォー監督の 『大人は判ってくれない』
(1959年) 等を撮影。
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・原作は、アメリカの作家パトリシア・ハイスミスが1955年に発表した 「The
Talented Mr. Ripley 」。フランス推理小説大賞 (翻訳部門) を受賞し
ている。
ハイスミスは 『見知らぬ乗客』 (1951年/監督:アルフレッド・ヒッチコック) の原作者としても有名。映画
『太陽がいっぱい』 については、トムの犯罪が露見するラスト (原作とは異なる) に不満を抱いていたという。
(左の写真) 左から、モーリス・ロネ、マリー・ラフォレ、アラン・ドロン |
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「The Talented Mr. Ripley 」 … 日本では 「太陽がいっぱい」 (1971年)、「リプリー」
(2000年) の邦題で出版されているが、それまでは
「才人リプレイ君」 と紹介されていた。
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・天使か悪魔か。妖しい美貌でファンを魅了したアラン・ドロンは本作で人気が爆発。ヒロイ
ン役のマリー・ラフォレは本作が銀幕デビュー作だった。
1963年、第3回フランス映画祭のために、アラン・ドロンとマリー・ラフォレが揃って初来日した。
(右の写真) 来日時のアラン・ドロン と マリー・ラフォレ
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・アラン・ドロンの当時の婚約者だったロミー・シュナイダーが、フィリップの友人フレディ
のガールフレンド役でカメオ出演している。
(左の写真) 左から、ビル・カーンズ (フレディ役)、ロミー・シュナイダー、
モーリス・ロネ
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・映画評論家の淀川長治さんが、本作はホモセクシャルの映画だと唱えた時はあまり賛同され
なかったそうだが、原作をより忠実に描いた 『リプリー』 (1999年)
では、マット・デイモン演じるトム・リプリーの同性愛者ぶりが明確に描かれた。尚、原作者のパトリシア・ハイスミスが別名義で発表した自伝的小説 「The
Price of Salt 」 (1952年) はレズビアンの恋愛を描いている。
(右の写真) モーリス・ロネ(左) と アラン・ドロン
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「The Price of Salt 」 … 『キャロル』 (2015年) として映画化された。
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