20世紀・シネマ・パラダ
イス
◆ パニック映画の古典的名作
サンフランシスコ。新聞社の社長令嬢メラニーは、ペットショップで店員と間違われ、見知らぬ男性から声を掛けられた。男性は、妹の誕生日
プレゼントに ‟愛の鳥 (ボタンインコ)” を購入しに来たのだが、あいにく 店になかった。
実は、男性はメラニーのことを知っており、店員と間違えたふりをしていたことを明かし、店を去った。
メラニーは、走り去る車のナンバーから男性の名前と住所を調べた。 |
翌日(土曜日)。メラニーはつがいの‟愛
の鳥”を購入し、男性(=ミッチ)のアパートへ届けに行った。アパートの住民から、ミッチは週
末はボデガ湾で過ごしていると聞かされ、メラニーはボデガ湾まで車を走らせた。雑貨店の主人からミッチの実家を教えてもらい、小学校の先生アニーを訪ね、ミッチの妹の名前がキャシーだ
と教えてもらった。 |
メラニーは、‟愛の鳥”
をこっそりと届け、ミッチを驚かせるために、貸しボートで湾を渡った。ミッチの実家の裏口から、誰にも見つからずに ‟愛の鳥”
を届けたが、引き返す途中
でミッチに見つかってしまった。 |
貸しボート場では、車で先回りをしたミッチが待っていた。とその時、1羽のカモメが突然メ
ラニーを襲い、彼女は額に怪我を負ってしまった。 |
2人は近くのレストランに入り、怪我の手当てをした。ミッチは弁護士をしているとのこと
だ。そこへ、ミッチの母親のリディアがやって来た。ミッチは、‟愛の鳥”
のお礼に、メラニーを夕食に招待した。 |
夕方。メラニーはミッチの実家を訪ねた。妹のキャシーとは直ぐに打ち解けたが、リディアは
どこかよそよそしく、メラニーのことを警戒している様子だった。 |
その夜。メラニーはアニーの家に泊まった。アニーはかつてミッチの恋人だったが、リディア
が原因で別れたという。夫に先立たれたリディアは、ミッチを頼る余り、彼に近づく女性を敵視しているとの事だ。
ミッチから電話がかかってきた。メラニーは、キャシーの誕生日パーティーに参加して欲しいと頼まれ、承諾した。 |
メラニーとアニーが寝床に就こうとした時、ドアをノックする音が聞こえた。アニーがドアを
開けると、死んだカモメが横たわっていた…。
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日曜日。ミッチの実家には、キャシーの誕生日を祝うため、メラニーとアニーの他、級友やそ
の母親たちが集まっていた。子供たちが庭で遊んでいると、カモメの大群が襲って来た。皆、家の中に避難し、大事には至らなかった。
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メラニーはその日も夕食を共にすることになった。食事の用意が整った時、今度は雀の大群が
煙突から侵入して来て、部屋の中はめちゃくちゃになってしまった。動転している母娘を案じ、メラニーは一晩滞在することにした。
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翌朝。リディアは車でキャシーを学校へ送り届けた後、近所のダンの家に立ち寄った。すると、ダンは鳥に襲撃されて死んでいた。
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ミッチは保安官に呼ばれてダンの家へ向かった。メラニーは、ショックで寝込んでしまったリ
ディアに頼まれ、キャシーの学校へ行くことになった。
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メラニーが学校の外で授業が終わるのを待っていると、気づかぬ間にカラスの大群が辺りを取
り囲んでいた。
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アニーは子供たちが怖がらないように、避難訓練なので外へ出たら走るように言い聞かせた。
子供たちが走り出すと、カラスが一斉に襲って来た。メラニーは逃げ遅れたキャシーと友達を連れて、道路に停めてあった車の中に避難した。
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カラスの大群が去り、メラニーはレストランから父親の新聞社に電話をかけたが、彼女の話は
信じて貰えない。レストランの客の中にも、「鳥が人間を襲うことはあり得ない 」 と、したり顔で講釈を垂れる女性がいた。
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ミッチがやって来て、対策を講じるべきだと訴えているその時、ガソリンスタンドの店員がカ
モメに襲われた。
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ガソリンに火が点き、人々が消火に駆けつけたが、カモメの大群が襲撃して来て、辺りは修羅
場と化した。
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鳥の異常な行動は、メラニーがボデガ湾に来た土曜日から始まった。電話ボックスに閉じ込め
られていたメラニーが、ミッチに救出されてレストランに戻ると、パニック状態に陥った女性から、鳥の異変の元凶はメラニーであり、「悪魔だ
」 と罵られた。
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メラニーとミッチは、キャシーと合流するためアニーの家に向かった。キャシーは無事だった
が、アニーが鳥に襲撃されて亡くなっていた。
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ミッチたちは、窓に板を打ち付けて家に立てこもった…。…おびただしい数の鳥の鳴声と羽音
が聞こえてきた…。
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鳥たちが、窓やドアを打ち破って侵入しようとしてきた…。
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…。鳥たちの攻撃が止んだ。皆、疲労困憊して眠っている中、目を覚ましたメラニーは、2階
から物音がすることに気づいた。彼女が1人で2階へ行き、部屋のドアを開けてみると、屋根が壊されていた…。
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部屋に侵入していた鳥たちが、一斉に襲いかかってきた…。
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◆ 主な出演者など
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・メラニー役 …
ティッピ・ヘドレン Tippi Hedren
・ミッチ役 … ロッド・テイラー Rod Taylor
・リディア役 … ジェシカ・
タンディ Jessica Tandy
・アニー役 … スザンヌ・プレシェット Suzanne Pleshette
・キャシー役 … ヴェロニ
カ・カートライト Veronica Cartwright
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・ヒッチコック監督の 『巌窟の野獣』 (1939年)、『レベッカ』 (1940年)
の原作者でもある女流作家ダフネ・デュ・モーリアの短編小説 「鳥」 (1952年出版)を元に、映画
『暴力教室』 (1955年/主演:グレン・フォード)
の原作者エヴァン・ハンターとヒッチコック監督が脚本を執筆した。
* エヴァン・ハンター …
本名のエド・マクベインで出版した 「87分署シリーズ」 の作家としても有名。 (右の写真) ヒッチコック監督(左) とエヴァン・ハンター
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・ティッピ・ヘドレンは、彼女が出演したダイエット・ドリンクのテレビCMがヒッチコック
監督の目に留まり、ヒロインに抜擢された。
映画の冒頭、ティッピ・ヘドレン扮するメラニーがペットショップに入る前、通りすがりの少年が口笛を吹いて、彼女が振り返るシーンは、ダイエット・ドリ
ンクのCMのパロディとなっている。
(左の写真) ティッピ・ヘドレン
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・約28,000羽の鳥が集められ、動物トレーナーのレイ・バーウィックが約300
羽の鳥を調教した。
バーウィックは生涯で約25,000の動物を調教したが、仕事中に殺してしまった動物は1匹だけで、それは 『鳥』
の撮影中だった。1羽の鳥が撮影機材の下敷きになって死んでしまったという。
(右の写真) ヒッチコック監督(左) とレイ・バーウィック
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* レイ・バーウィック … 『鳥』 の他、『オーメン2 / ダミアン』 (1978年)、『グレムリン』 (1984年)
等に登場する動物の調教もした。 |
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⇦ よく目にする写真ですが、大
抵がティッピ・ヘドレンだと間違われています。この女性はジェシカ・タンディ。
雀の大群に襲われる場面での2人の衣装を見比べれば (左下の写真)、ジェシカ・タンディだと判りま
す。
(左の写真) ジェシカ・タンディ
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・メラニーが2階の部屋で鳥に襲われるシーン。当初は機械じかけの鳥を使用する予定だった
が、本物の鳥が使用された。下手に動くと危ないとのことで、ティッピ・ヘドレンは紐で固定されていたという。
約2分のシーンだが、撮影には1週間を要し、精も根も尽き果てたヘドレンは入院。ロッド・テイラーがヘドレンを抱き抱えるシーン (右上の写真) は、ヘドレンのボディダブル(替え玉) で
撮影された。
(右の写真) ティッピ・ヘドレン
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・いわゆる映画音楽は作曲・使用されず、バレエ音楽等の作曲家レミ・ガスマンと電気楽器ト
ラウトニウムの奏者オスカル・ザラが作り出した電子音が 効果音として使用された。
(左の写真) 右から時計回りに、ヒッチコック監督、オアスカル・ザラ、レミ・ガスマン
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・アカデミー賞の特殊視覚効果賞にノミネートされたが、『クレオパトラ』 に敗れた。
・AFI (アメリカ映画協会) が2001年に選定した 「スリリングな映画ベスト100」 で第7位に。
(右の写真) 左から、ロッド・テイラー、ティッピ・ヘドレン、ジェシカ・タンディ
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◆ ヒッチコック監督 お約束のカメオ出演シーン
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映画が始まって間もなく、ティッピ・ヘドレン扮するメラニーと入れ違いで、ペットショップ
から出てくる男性役で出演。
2匹のテリア犬はヒッチコック監督のペットで、ジョフリーとスタンリーという名前だった。
(左の写真) ヒッチコック監督のカメオ出演シーン
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◆ ギャラリー
◆ ピック・アップ … ティッピ・ヘドレン
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Tippi Hedren
1930- (アメリカ)
・ミネソタ州生れ。本名は Nathalie Kay Hedren
。銀幕デビュー前は、ニューヨークでファッション・モデルをしていた。1952年に結婚し、1957年に長女
(女優のメラニー・グリフィス) を授かったが、1961年に離婚した。
テレビCMに出演したことがきっかけで、ヒッチコック監督にスカウトされ、7年契約を締結。『鳥』
のヒロイン役で銀幕デビューすると、「第2のグレース・ケリー」 として脚光を浴 |
び、同監督の次作 『マーニー』 (1964年) で
もヒロインを務めた。尚、
長い間、1935年生れと広報されていた。 |
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『鳥』
の撮影中から、ヒッチコックにセクハラを受けていた。車の中でキスされそうになったこともあったとい
う。当時の彼女は幼い娘を抱えたシングルマザーであり、生活の為、関係を迫るヒッチコックをかわしながら撮影を続けていたが、エスカレートしていくヒッチ
コックの態度に耐えられなくなり、『マーニー』
の撮影後、ヒッチコックとの契約を終わらせた。★
(右
の写真) 『マーニー』 ショーン・コネリーと
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★〜★ の事は、伝記作家のドナルド・スポトの 「The Dark Side of Genius : The Life of Aifred
Hitchcock 」(1983年出版) で初めて明かされた。 |
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・『マーニー』 の後、映画出演が途絶えた。フランソワ・トリュフォーが、『華氏451』 (1966年) のヒロイン役をオファーしたが、ヒッチコックが彼女には知らせずに揉み消していた。2017年、「# Me Too 」
で大物映画人が何人も糾弾されたが、(ヒッチコックのセクハラの真偽はともかく)
過去には、泣き寝入りせざるを得なかった人が大勢いるんでしょうね。
(左の写真)
1963年のカンヌ国際映画祭にて。ティッピ・ヘドレンとヒッチコック |
・日本では、ティッピ・ヘドレンは再婚 (1964年) を機に一時引退していたとも言われていたが、ヒッチコックとの契約を終わらせた
後も女優を続け、数本のTVドラマに出演していた。そして、チャップリンの最後
の作品となったイギリス映画 『伯爵夫人』 (1967年) で、3年ぶりに銀幕復帰もした。
(右の写真) 『伯爵夫人』 チャップリンと |
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・別の映画の撮影でアフリカを訪れた際に、ライオンなどの野生動物が絶滅の危機に瀕してい
ることを知り、当時の夫 (1964〜1982年)
と一緒に、150頭のライオンやトラ等と暮らす家族を描いた 『ロアーズ』 (1981年)
を11年がかりで完成させた。撮影中、多くのスタッフが負傷。彼女もライオンに頭を噛まれて38針も縫ったという。「史上最も危険な映画」
としてカルト的な人気を得ている作品。
(左の写真) 『ロアーズ』 |
・1983年、カリフォルニア州アクトンの動物保護施設
「シャンバラ保護区」
を支援するため、非営利財団を設立して代表に就任。
動物園やサーカス等で人間に飼われていたものの、行き場を失ったライオンやトラを保護する施設で、マイケル・ジャクソンが飼っていた2匹のベンガルトラ
を受け入れたことも話題になった。
(右の写真) ティッピ・ヘドレン。 「シャンバラ保護区」 にて。 |
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・2012年、伝記作家のドナルド・スポトの 「Spellbound by Beauty : Alfred
Hitchcock and His Leading Ladies 」 (2008年出版) を
元に、彼女とヒッチコック監督の関係を描いたTVドラマ 「ザ・ガール ヒッチコックに囚われた女」 が製作され、日本では衛星放送で放映された。 |
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