20世紀・シネマ・パラダ
イス
|
或る夜の出来事
It Happened One Night
監督:フランク・キャプラ
(1934年/アメリカ)
|
◆ アカデ
ミー賞の主要5部門を制覇したロマンチック・コメディの古典的名作
大銀行家アンドリュース氏の箱
入り娘エリーは、父親の反対を押し切って、プレイボーイとして名高いパイロットのウエスト
リーと婚約したため、父親のヨットに軟禁されていた。 |
ある日、父親と口論になり、怒ったエリーは海へ飛び込んで逃げ出した。 |
|
ニューヨークの新聞記者ピーターは、取材でマイアミへ来ていたが、電話でクビを言い渡されてしまった。 |
見ず知らずのエリーとピーター。2人はマイアミ発ニューヨーク行きの夜行バスで隣り合わ
せ
になった。 |
停留所で休憩中、エリーはカバンを置引きされてしまった。ピーターがバス会社に通報しろと
助言したが、エリーは身元を知られたくないので助言を聞き入れなかった。 |
|
エリーはピーターのお節介が煩わしいので席を変わろうとしたが…。 |
エリーは次の停留所でバスに乗り遅れてしまった。停留所には、彼女が落とした切符を拾った
ピーターが待っていたが、彼は何故かエリーの身元を知っていた。新聞に、「アンドリュース氏が懸賞金付きで娘を捜索中」
との記事が、エリーの写真とともに載っているからだった。 |
|
|
エリー 「お金は後で払うから見逃して…」。
ピーター 「金で全て解決できると思っている…。なぜ ”困ってるの、助けて”
と言えないんだ」。 |
2人はニューヨーク行きの次便に乗ったが、大雨で通行止めをくらい、乗客は近場のモーテ
ルに宿
泊することになった。 |
|
|
ピーターが話を持ち掛けた。「恋人のもとへ送り届けてやるから、その間の事を独占記
事として書かせろ。特ダネだ。断れば父親に通報する」。エリーは観念して、ピーターと行動を共にすることに。夫婦と称し、モーテルの同部屋に宿泊
することになった。
|
ピーターは下心など無いと言って、ベッドの間に毛布を掛け、「ジェリコの壁」と称した。
エリー 「あなたのお名前は?」。 ピーター 「ピーター・ウォーン」。 エリー
「イヤな名 」。 ピーター 「今夜は同じ姓だぜ。お休みウォーン夫人」。
|
翌朝。エリーの父親が雇った探偵がモーテルに乗り込んで来た。エリーとピーターは協力して
一芝居を打
ち、まんまと探偵を騙した。この事がきっかけで、2人の仲は急速に打ち解けていった。
|
|
2人はバスの旅を続けた。乗客の中に無一文の母子がいて、2人は持ち金のほとんどを差し
出してやった。その頃、エリーの父親は懸賞金を1万ドルに引き上げ、捜索を強化していた。
|
乗客の1人がエリーの正体に気づき、懸賞金を山分けしようとピーターに言い寄って来た。
ピーターは、エリーを誘拐したギャングの一味のフリをして、その男を追っ払った。
|
2人は人目につくバスから離れたが、持ち金が無い。ピーターは父親へ連絡することを勧めた
が、エリーは拒んだ。
|
翌日。歩き疲れた2人はヒッチハイクで車を拾うことに…。
|
|
ヒッチハイクに成功したものの、荷物を積んだままトンズラされた…。
|
後を追ったピーターは、
荷物だけでなく、車
も奪って戻って来た。
|
|
その頃、エリーの父親は婚約者のウエストリーと面談していた。娘の身を案じたアンドリュー
ス氏は、
ついに2人の結婚を認め、新聞で声明を発表した。
|
エリーは父親が結婚を認めたことを知った。ニューヨークまであと僅か。しかし、エリーは先
を
急ぎたがらず、ピーターとモーテルで最後の夜を過ごすことになった。
|
エリーは「ジェリコの壁」を通り越してピーターのところへ行き、愛を告白した。しか
し、ピーターは半信半疑。しかも失業中で無一文のため、愛を受け入れることを躊躇し、追い返してしまった。
|
エリーは泣き崩れて寝入ってしまった。ピーターは、エリーを部屋に残し、1人でニューヨー
ク
へ
向かった。友人の酒場で記事を書き上げたピーターは、その特ダネ記事を持って、クビになった新聞社へ乗り込んだ。エリーに求婚するには金が必要だ。
ピーターは記事を1,000ドルで編集長に売り、エリーのもとへ向かった。
|
|
その頃、モーテルでは、車がなくなったので客に夜逃げされたと思い込んだ宿主夫妻が部屋に
来
て、無一文のエリーは追い出されてしまった。
エリーは、ピーターにふられた上に、置き去りにされたと思い込み、保安官事務所へ行って、父親のところへ電話を入れた。
|
上機嫌でモーテルへ向かうピーターの車を、エリーの父親とウエストリーを乗せたパトカーが
追
い越して行った。エリーは無事保護され、パトカーに乗った。
|
ピーターは、すれ違ったパトカーの中にエリーの姿を目撃し、車をUターンさせて後を追った
が、ガス欠で万事休した。
|
エリーの失踪騒動は連日紙面を騒がせていたが、ついにウエストリーとの結婚が決まったと報
道された。ピーターは1,000ドルを返しに新聞社へ行った。全てを察した編集長は、クビを撤回し、ピーターを慰めた。
|
結婚式を目前に控えてエリーはふさぎ込んでいた。父親が事情を問うと、エリーは泣き崩れ、
旅
の途中で別の男性を愛してしまったことを告白した。
エリー 「彼は私を軽蔑しているわ…。パパの育て方が悪かったからバカ娘になったと…」。
父 「見込みのある男だ 」。
|
|
|
相手の名前を聞いた父親はハッとした。その男から手紙が来ていたのだ。
「お嬢さんについて、金銭上の話し合いがしたい 」。
手紙を読んだエリーは、ピーターの目的が懸賞金であったと思い込み、開き直ってしまった。
|
アンドリュース氏はピーターを自宅に呼んだ。ピーターが請求したのはガソリン代等の実費の
みだった。
アンドリュース氏は、娘を愛しているか否かを尋ねた。ピーターは、エリーの愛の告白が気まぐれだったと思い込んでいるので、ヤケクソで、「愛して
いるさ 」
と怒鳴り、部屋から出て行った…。
|
|
結婚式当日。ヴァージンロードを歩きながら、父親は娘に語り掛けた。「お前はバカ
だ…。ピーターは実費しか請求しなかった…。誠実な男だ。お前を愛していると言っ
た…。裏に車を用意してある…」。誓いの言葉の時。エリーが下した決断は…。
|
|
『或る夜の出来事』 予告編
|
◆ 主な出演者など
・第7回アカデミー賞で、作品賞、監督賞、主
演男優賞、主演女優賞、脚色賞(ロバート・リスキン)の主要5部門制覇と
いう快挙を成し遂げたロマンチック・コメディの古典的名作。
(右の写真)左から、フランク・キャプラ監督、クラーク・ゲーブル、
クローデット・コルベール |
|
|
・ピーター役の最初の候補だったロバート・モンゴメリーはスケジュール的にNGだった。
クラーク・ゲーブルは、給料に不満を持つな
ど天狗ぶりが目についていたため、お仕置きとして、MGM社から当時は弱小会社だったコロンビア社に貸し出された、との伝説がある。
(左の写真)左から、クローデット・コルベール、
クラーク・ゲーブル、フランク・キャプラ監督
|
・クラーク・ゲーブルと言えば、『風と共に去りぬ』(1939年)の
レット・バトラー役があまりにも有名だが、本作でのチャーミングなゲーブルも秀逸。キャプラ監督曰はく、「ゲーブル本来の性格」。
|
|
・クローデット・コルベールは、オファーを受けた時、旅行へ行く予定であり、しかも監督
が失敗作となった『力漕一挺身』
のフランク・キャプラ。断るつもりで高額のギャラと撮影期間は4週間という条件を出したが、これが受け入れられたため出演となったという。脚本に不満が
あった彼女は撮影に入ってからも不機嫌で、有名なヒッチハイクの足を
見せるシーンでは、当初は代役を用意させていたとか。 |
|
|
・コロンビア社にとって、当時最大のヒット作品となり、映画の中でゲーブルが肌着を着けず
にワイシャツを着ていることから、全米でこのスタイルが大流
行。肌着の売上が前年比で半減し、コロンビア社は肌着メーカーから訴えられた、というエピソードも。
|
・AFI (アメリカ映画協会)が選定した、「アメリカ映画100年ベスト100」(1998年選定)で第35位、「笑える映画ベスト10」(2000年選定)で
第8位、「ロマンチック・コメディ映画ベスト10」(2008年選定)で第3位に選出された。 |
|
|