20世紀・シネマ・パラダ イス
ライムライト
Limelight
監督:
チャールズ・チャップリン
(1952年/アメリカ)
◆
チャップ リンの最後のハリウッド映画
1914年のロンドン。酒に酔ってアパートに帰って来た初老の男性が、階上の自室 へ行く途中、ガスの臭いが漂っていることに気づいた。1階の部屋に住む若い女性がガス自殺を図っていたのだ。男性は大急ぎで 医者を呼び、女性は一命を取り留めた。
男性はミュージック・ホールの道化師
カルヴェ ロ
。かつては大変な人気を誇っていたが、今ではすっかり落ちぶれて酒浸りの日々を送っていた。
女性の名は
テリー
。 バレリーナ だったがリュウマチに罹り、踊ることはおろか、歩くことさえ出来なくなったことを苦に自殺を図ったとのことだった。
テリーは健康を回復するまでカルヴェロの 部屋で養生することになった。
カルヴェロは毎晩のように舞台の夢を見ていたが、この日はテリー と共演している 夢を見た…。
カルヴェロは失意のどん底にいるテリーを励まし続けていた。
そんなある日、久方ぶりにエージェ ントから呼び出しの電報が届いた。かつての大スターに相応しい仕事ではなかったが、名前を隠して出演することにした。
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テリーが歩けない原因は精神的なものだと医者から知らされたカルヴェロは、彼女に半生を語 らせ、原因を突き止めた。テリーは姉が自分のために娼婦と なってレッスン代等を稼いでいたことを知り、その負い目から歩けなくなったのだった。
カルヴェロはテリーが生きる事に前向きになるよう恋愛について質問した。すると彼女は、名 前も知らない作曲家志望の青年に恋心を抱いていたと打ち明けた。
カルヴェロはテリーを励ます事で、自身の舞台への意欲と自信を取り戻していた。
しかし、カルヴェロの復帰舞台は客から全くウケず、たった1日で契約を打ち切られてしまっ た。
失意のカルヴェロを今度は テリーが励ました。そして、テリーが歩けるようになった。
6ヶ月後。帝国劇場のバレリーナとなっていたテリーの口添えで、カルヴェロは道化役として 舞台に出演することになった。テリーは新作のプリマドンナに抜擢 され、かつて恋心を抱いていた作曲家の
ネヴィル
と再会した。
カルヴェロはテリーから愛を告白された。カルヴェロもテリーを愛 していたが、年齢や境遇の違いを痛感しており、彼女からのプロポーズを一笑に付した。
新作舞台の幕が開いた。カルヴェロの叱咤激励もあり、テリーは見事にプリマドンナを務め た。
ネヴィルが軍に召集された。テリーはネヴィルからのプロポーズを 断り、改めてカルヴェロに 結婚を迫ったが、カルヴェロは相手にしなかった。
そんなある日、カルヴェロは舞台の興行主が道化役の代役を探して いることを知り、テリーの前から姿を消した…。
…時は流れた。カルヴェロが去った後、テリーは欧州公演に出立し た。そして、カルヴェロは辻音楽師に成り果てていた。
欧州公演から戻ったテリーは、街で偶然にカルヴェロを見つけ、今 でも変わらぬ思いであると告げた。
カルヴェロがもう一度舞台に復帰したいとの願望を抱いていることを知ったテリーの取り計ら いで、カルヴェロの記念公演が開催されることになったが…。
『ライムライト』 予告編
◆
主な出演者など
・
カルヴェロ役
…
チャールズ・チャップリン
・
テリー役
… クレア・ブルーム
・
カルヴェロの共演者役
…
バ スター・キートン
・
ネヴィル役
… シドニー・チャップリン
・チャップリンが
『殺 人狂時代』
(1947年)
以来、5年ぶりに発表した作品。
1952年9月16日、本作の
プレミアのた め、ロンドンへ向けニューヨークを出港したチャップリンが、船中でアメリカの司法長官からの再入国を許可しな い旨の通知(事実上の国外追放命令)を受けたため、最後のハリウッド映画となった。
(右の写真)ロンドンでのプレミア時。左から、マーガレット王女、チャップリン、クレア・ブ ルーム
・チャップリンの次男シドニーが作曲家ネヴィルを演じた他、長男のチャップリン・ジュニ ア、長女のジェラルディン、三男のマイケル、次女のジョセフィン、そして、異父弟のウィーラー・ドライデン(テリーの医師役)が出演した。
*
長男、次男は
リタ・グレイ
の 子供。長女以下は
ウーナ・オニール
の子供。
(左の写真)クレア・ブルーム、シドニー・チャップリン
左から、マイケル、ジョセ フィン、ジェラルディン
長男のチャールズ・チャッ プリン・ジュニア(左)
・サイレント期にチャップリンの好敵手だった
バスター・キートン
と初共演。往年の映画ファンを歓喜させた。また、『チャップリンの移 民』
(1917年)
、『偽牧師』
(1923年)
等に出演 したロイヤル・アンダーウッド、
ハロルド・ロイド
とコンビを組んでいた喜 劇役者スナッブ・ポラードも出演した。
リハーサル中のバスター・ キートン(左)とチャップリン
左から、チャップリン、 ジュリアン・ルドウィッグ、
スナッブ・ポラード、ロイヤル・アンダーウッド
・映画評論家の淀川長治さんが撮影現場を訪問し、チャップリンが
来日した時
(1936年)
以来の再 会を果たしている。
辻音楽師に成り果てたカルヴェロがネヴィルと再会し、「
時は偉大な作家だ
」との台詞を吐く場面の撮影を見学した。
(右の写真)淀川さんが見学したシーン
・ロスアンゼルスでは、チャップリンの名誉が回復された1972年に初公開され、その年度 のアカデミー賞で劇映画作曲賞を受賞した。
< 主題曲 : テリーのテーマ (エタナリー) >
◆
ピック・アップ … クレア・ブルーム
Claire Bloom
1931〜 (イギリス)
・1931年、ロンドン生れ。1947年、16歳の時に舞台デビュー。翌1948年、イギリス映画『
The Blind Goddess
』 で銀幕デビューした。
・チャップリンの『ライムライト』 のヒロイン役に抜擢され、国際的な人気スターに。以後、英・米の映画、舞台、TVで演技派女優として活躍。
『二つの世界の男』 (1953年)
ジェームス・メーソン
と
『リチャード三世』 (1955年)
ローレンス・オリヴィエ
と
『カラマゾフの兄弟』 (1958年)
ユル・ブリンナー
と
『暴行』(1964年)
ポール・ニューマン
と
・黒澤明監督の『羅生門』
(1950年)
を 舞台劇にした「
Rashomon
」
(1959年)
で共演した
ロッド・スタイガー
と結婚したが10年後に離婚。その後、2度の結婚・離婚歴が ある。
*
映画『暴行』も『羅生門』が原案の作品。
・2013年、大英帝国勲章CBEを授与された。
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