20世紀・シネマ・パラダ
イス
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生きるべきか死ぬべきか
To Be or Not to Be
監督:エ
ルンスト・ルビッチ
(1942年/アメリカ)
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◆ 占領下のポーランドを舞台にナチスを痛烈に風刺したコメディの傑作
1939年8月、ポーランドの首都ワルシャワ。人気俳優のジョセフとマリアのトゥラ夫妻は、ナチスを風
刺した新作劇「ゲシュタポ」の稽古中だった。 |
トゥラ夫妻主演の舞台「ハムレット」
の公演中。楽屋のマリア宛にファン・レターが届いた。差出人に心当たりのあったマリアは、ジョセフの「生きるべきか死ぬべきか」
の台詞を合図に、楽屋へ来るように返事を出した。 |
ハムレット役のジョセフが「生きるべきか死ぬべきか」
の台詞を発した時、観客の1人が席を立った。 |
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若くてハンサムなポーランド空軍のソビンスキー中尉と会ったマリアはデートの約束
をした。 |
出番を終えたジョセフが楽屋へ戻って来た。芝居の途中で観客が席を立ったことにショックを
受けているジョセフを、マリアはそ知らぬ顔で慰めた。 |
新作劇「ゲシュタポ」が政府の命令により公演中止となり、「ハムレット」
が続演された。マリアと中尉の密会も続いており、中尉は結婚を迫ったが、離婚する気のないマリアは困惑していた。 |
そんな折、ドイツ軍がポーランドに侵攻してきた。数日後、ワルシャワの街は占領されてし
まっ
た。 |
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イギリスに配属されたソビンスキー中尉は、極秘任務でワルシャワへ向かう諜報部のシレツキー教授にマリアへの伝言を託し
た
が、人気女優である彼女の事を知らなかった教授の正体に疑念を抱いた。中尉は地下組織(レジスタンス)
へのメッセージを携えワルシャワへ飛んだ。そして、中尉と合流したマリアがメッセージを地下組織に届けた。
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アパートへ戻ったマリアは玄関前で待ち伏せていたドイツ兵に同行を求められ、ゲシュタポの
本部が設置されているホテルに
連行された。ホテルの部屋にシレツキー教授が現れ、ナチスの側に立てとマリアを誘惑した。
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ジョセフがアパートへ戻ってみると、見知らぬ男(ソビンスキー中尉)
がベッドで寝ていた。男の顔をよく見て、ふと思いついたジョセフが、「生きるべきか死ぬべきか」と声を掛けると男は起き上がった。
ジョセフと中尉が言い争っているところへマリアが帰って来た。中尉の疑念通り、教授はナチスのスパイだった。ジョセフと中尉は教授を始末するため協力す
ることになった。
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マリアは教授からの夕食の誘いに応じ、再びゲシュタポの本部に入った。教授がマリアに言い
寄っている時に、「収容所の鬼」と呼ばれているエアハルト大佐から呼び出された。
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教授を呼び出したのはゲシュタポに扮装した劇団員と地下組織のメンバーたちであった。劇
場をゲシュタポの事務所に作り変え、エアハルト大佐に扮したジョセフが教授を迎えた。
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初めのうちは教授を上手くだましていたが、話がマリアと中尉の不倫の件に及んだ時にジョセ
フが取り乱してしまった。教授は芝居を見破り、ピストルを取り出して逃亡したが、地下組織のメンバーによって撃ち殺された。
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拘束されているマリアを救出するため、今度は教授に扮装したジョセフがゲシュタポの本部に
乗り込りこんだ。ジョセフは本物のエアハルト大佐に呼び出されてしまったが、上手く立ち回り、事なきを得た。
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翌日。イギリスへ脱出するため、マリアはエアハルト大佐のもとを訪れた。だが、劇場に隠し
ていた教授の死体がゲシュタポにより発見され、エアハルト大佐もその事を既に知っていた。マリアはジョセフに知らせるため急ぎ帰宅したが、ジョセフは既に
大佐の所へ向かった後であった。
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教授の死体が発見されたことを知らぬジョセフが、教授に扮装して大佐のもとを訪ね、教授の
死体が置かれている部屋に入れられてしまった。絶体絶命のピンチ
だったが、付け髭をネタに一芝居を打って窮地を脱し、マリアから事の次第を知らされた劇団員たちが、ゲシュタポに扮装してジョセフを救出した。
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ワルシャワの劇場はヒトラー総統を迎えるため厳重体制だった。ジョセフたち劇団員は
イギリスへ脱出するため、この劇場でイチかバチかの大芝居を打って出ることにした…。
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『生きるべきか死ぬべきか』 予告編
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◆ 主な出演者など
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・ジョセフ・トゥラ役 …
ジャック・ベニー
・マリア・トゥラ役 … キャ
ロル・ロンバード
・ソビンスキー中尉役 … ロバート・スタック
・シレツキー教授役 … スタンリー・リッジス
・エアハルト大佐役 … シグ・ルーマン
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・エルンスト・ルビッチ監
督の『ニノチカ』(1939年)の原案者で
もあるメルヒオル・レンジェルが執筆した脚本を、エドウィン・ジャスタス・メイヤーとルビッチ監督が脚色。
ルビッチ監督は脚本を書いている時から、主役のジョセフ役はジャック・ベニーしかいないと決めていたという。
(右の写真)撮影時のジャック・ベニー(手前左)とルビッチ監督(手前右)
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・ヒロインのマリヤ役は、ルビッチ監督のお気に入りの女優ミリアム・ホプキンスが候補だったが実現せず、キャロル・ロンバードが起用された。
ルビッチ監督はキャロル・ロンバードの憧れの監督であり、彼女はそれまでのどの作品の撮影よりも楽しんでいたと言われている。
(左の写真)打ち合わせ時のルビッチ監督とキャロル・ロンバード
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・キャロル・ロンバードは本作の撮影後、戦時国債キャンペーン中の飛行機事故で他界。
彼女がファンに向かって言った最後の言葉「V for Victory !」
は、彼女の台詞ではないが、本作の中で登場するフレーズである。
(右の写真)ジャック・ベニー、キャロル・ロンバード
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・主役の2人は勿論、脇を固める登場人物たちも魅力的に描かれており、サスペンスとコメ
ディが見事に融合した第一級の娯楽作品となっている。
1983年、リメイク作の『メル・ブルックスの大脱走』が製作された。 |
◆ ピック・アップ … ジャック・ベニー
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Jack Benny 1894-1974
(アメリカ)
・イリノイ州シカゴ生れ。父親はポーランド、母親はリトアニアからの移住者で共にユダヤ人。
・高校を中退し、子供の頃から習っていたバイオリンを手にボードヴィリアンとなった。第1次世界大戦中は海軍に入隊。戦後、舞台に出演しているところを
スカウトされ、『The Hollywood Revue 1929
』で銀幕デビューした。
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・1932年にスタートしたラジオのコメディ番組「The
Jack Benny Program」は、1950年からはTV番組となり、1965年まで30年以上続いた人気番組だった。
・出演した映画は少なく、現在、DVD等で彼の姿が観られるのは、本作の他に『踊るブロードウェイ』(1935年)と、
カメオ出演した『おかしなおかしなおかしな世界』(1963年/監督:スタンリー・クレイマー)くらい。『カサブランカ』(1943年)にもカメオ出
演しているとの説があり、ファンの間では彼がどのシーンに出演しているのか話題になったとか。
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・第16回(1944年)、第19回(1947年)のアカデミー賞授賞式で司会を務めた。
(左の写真)クラーク・ゲーブル(左)、キャロル・
ロンバードと
・1974年、80歳で他界。 |
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