20世紀・シネマ・パラダ
イス
昼下りの情事
Love in the Afternoon
監督:ビリー・ワイルダー
(1957年/アメリカ)
◆ 2大人気
スター 夢の共演作
花の都パリ。私立探偵のクロード・シャヴァッ
スは、X氏夫人の浮気調査をしていたが、 リッツ・ホテルのスウィート・ルームで夫
人が浮気をしている証拠写真を撮ることができ、事務所兼自宅へ帰った。
シャヴァッスは娘のアリアーヌ と2人暮らし。アリアーヌは音楽院でチェロを習っているが、好
奇心旺
盛で父親の事件簿を内緒で読むのを楽しみにしている。特に道ならぬ恋絡みの事件がお気に入りである。
依頼人のX氏 が訪ねて来た。X
氏は妻の浮気を知るや、相手の男=アメリカ人の大富豪でプレイボーイとして名高いフラナガン を
撃ち殺すと宣言して部屋を後にした。アリアーヌはその様子を盗み聞きしていた。
その日の夜。アリアーヌが音楽院で授業を受けている時刻、夫がまだロンドンに出張中だと
思っているX氏夫人がリッツ・ホテルのスウィート・ルーム(フラナガンの部屋)に入っていった。
授業が終わったアリアーヌはホテルと警察に電話をしたがとりあってもらえず、友人のミ
シェル の車でリッツ・ホテルに駆けつけた。
スウィート・ルームの前にはX氏が待機しており、アリアーヌはバルコニーから部屋に侵入し
た。
暫らくするとX氏が拳銃を手に乱入してきたが、その時には夫人とアリアーヌが入れ替わって
おり、フラナガンは難を逃れた。
殺人を回避でき、アリアーヌが足早に部屋を出ようとした時、X氏が部屋に置き忘れた拳銃を
取りに引き返し
て来た。フラナガンがとっさにラブ・シーンを演じ、ア
リアーヌは唇を奪われた。
「明日も会おう 」。アリアーヌはデートに誘われ、昼下りに会う約束をした。
翌日。アリアーヌは父親に内緒でフラナガンの事件簿を読み、改めてプレイボーイぶりを
知った。そして、もう会うまいと決心して手紙を書いたが…。
アリアーヌはホテルを訪ねた。フラナガンのお決まりの手である楽団が呼ばれ、2人は‟魅
惑のワルツ
”に合わせて踊った。
フラナガンのモットーは、「愛して逃げれば新たな愛に会える 」
。この日は、世界中を飛び回っているフラナガンのパリでの最終日。アリアーヌは名前も明かさずに別れを告げた…。
アリアーヌはフラナガンに恋してしまった。フラナガンはその後も世界各国でプレイボーイぶ
りを発揮し、その様子は新聞や雑誌を賑わせていた…。1年後、アリアーヌはミシェルとオペラを鑑賞しに行き、劇場で偶然にフラナガンと再会した。
翌日。アリアーヌは父親が依頼人から預かった高級コートを無断で借用してフラナガンの部屋
を訪ねた。そして、コートはボーイフレンドからプレゼントされたものだと嘯いたのを事始めに、この1年間、多くの男性を相手に「愛して逃げる 」
を実践してきたと話し、フラナガンを驚かせた。
2人は昼下りの情事を重ねたが、アリアーヌの作り話を真に受けたフラナガンがやきもちを焼
き始めた…。
アリアーヌは未だに名前を明かさず、夜になると決まって帰ってしまう。フラナガンはすっか
り困惑させらていた。
フラナガンはアリアーヌが録音した恋の遍歴のテープを聞きながら一晩中やけ酒を煽った。翌
朝、彼はサウナへ行き、偶然にX氏と再会した。フラナガンが恋愛関係で悩んでいると察したX氏は、シャヴァッスの名刺を手渡した。
フラナガンはシャヴァッスを訪ねた。フラナガンの話を聞いたシャヴァッスは、相手の女性が
娘のアリアーヌだと気づいた。というのも、アリアーヌがフラナガンに語った恋愛話は全てシャヴァッスの事件簿の内容だったからだ…。
『昼下りの情事』 予告編
VIDEO
◆ 主な出演者など
・原作は、フランス人作家クロード・アネの「アリアーヌ」(1920
年出版) 。『Ariane, jeune fille russe 』(1931年/フラン
ス) 、『The Loves of Ariane 』(1931年/イギリス) 、
『Ariane 』(1931年/ドイツ) と同じ年に3ヶ国で映画化されており、ワイルダー
監督はドイツ版を観たことがあったようです。
(右の写真)
左から、ゲーリー・クーパー、ワイルダー監督、オードリー・ヘップバーン、モーリス・シュヴァリエ
*
クロード・アネ … 本名はJean Schopfer 。テニスの選手でもあり、全仏オープンの前身の大会で優勝(1892年)
したこともあった。
・クロード・アネの「アリアーヌ」をワイルダー監督とI・A・L・ダイアモンドが共同で脚
色。脚本家としての才能を認められたダイアモンドは、以後、ワイルダー監督の片腕として、同監督のキャリア後期を支えていくこととなった。
(左の写真)左から、モーリス・シュヴァリエ、ゲーリー・クーパー、オードリー・ヘップバー
ン、ワイルダー監督
・オードリー・ヘップバーンにとって、ワイルダー監督とは『麗しのサブリナ』 (1954年) 以来の2作
目。自身の前作の『パリの恋人』(1957年) に引き続きパリジェンヌを演じた。
(左の写真)オードリー・ヘップバーン
・オードリー・ヘップバーンの父親を演じたモーリス・シュヴァリエは、ワイルダー監督が師
と仰いだエルンスト・ルビッチ監督の作品で大活躍したフランスの大スターで、ハリウッド映画に出演したのは20年ぶりだった。
(右の写真)オードリー・ヘップバーン、モーリス・シュヴァリエ
・フラナガンとアリアーヌが2本指をクルっと回してグッドバイのポーズをとるが、これは
ゲーリー・クーパーの出世
作『モロッコ』 (1930年) の中で、クーパー
と恋人役のマレーネ・ディート
リッヒ がとったポーズ。映画ファンのハートをくすぐるの上手いワイルダー監督ならではの心憎い演出。
『モロッコ』
のマレーネ・ディートリッヒ
『昼下りの情事』
のオードリー・ヘップバーン