20世紀・シネマ・パラダ
イス
◆ ヒッチ
コック監督 イギリス時代の代表作
ロンドンのとあるミュージック・ホールで休暇を楽しんでいるハネイ。舞台には驚異的な記憶力を持つミスター・メモリーなる男が登場し、客からの質問に答えて、その記
憶力を披露していた。
突然、ホール内に銃声が響いた。観客が出口に殺到してホール内は大混乱に。ハネイはその場で助けた女性に請われ、彼女を自分のアパートに連れて行った。 |
女性の名はアナベラ。英国のス
パイだと言う。敵対国が英国の防空上の秘密を盗み出すのを
防ぐのが任務で、敵のスパイ2人を追ってミュージック・ホー
ルに入ったが、見つかってしまい、逃げ出すために銃を撃ったと語った。 |
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俄かには信じ難い話だ。だが、窓の下で、2人組の男が見張っているのを見て、ハネイはアナ
ベラを信用した。彼女はハネイの身も危険になったと告げ、敵のスパイ組織は「三十九夜」と言い、そのボスは小指の先が欠けていると教えた。 |
深夜。アナベラが何者かに背中を刺された。「次はあなたが…、早く逃げて」
と言い残し、彼女は息絶えた。
警察には信じて貰えぬ状況だ。ハネイは、アナベラが手にしていたスコットランドの地図の村へ行くことを決意し、アパートに入ってきた牛乳配達夫から制服を
買い取り、外の2人組を撒いてアパート
から脱出した。 |
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スコットランドへ向かう列車内で新聞を見たハネイは、アナベラの殺人事件が既に明るみとな
り、自分が殺人容疑者となっていることを知った。
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ハネイの不安は的中し、途中の駅で刑事たちが乗り込んできた。ハネイは個室に1人でいた女
性の唇をいきなり奪い、ラブシーンを演じて刑事たちの目をやり過ごした。その後、女性に事情を話したが、当然信じて
貰えず、戻ってきた刑事たちに殺人の容疑者だと通報されてしまった。
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ハネイは刑事たちを振り切り、列車が鉄橋で急停車した隙に車外へ逃げ出した。
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目的地の近くまで辿り着いたハネイは、夫婦で暮らしている農家に宿を求めた。農家の主
人は、ハネイと年若い妻との仲を警戒の目で見張っていた。
深夜、刑事たちが追って来たが、ハネイに好意を寄せていた農家の妻が逃亡の手助けをしてくれた。
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ハネイは目的地の屋敷に着いた。アナベラの知人だと名乗り、屋敷の主人と対
面したが、その男ジョーダン教授こそが、小指の先が欠けた「三十九夜」
のボスだった。ハネイはジョーダン教授にピストルで胸を撃たれ、倒れた…。
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農家の妻がくれたコートの胸ポケットに分厚い讃美歌集が入っていたため、ハネイは命拾いを
した。
ハネイはジョーダン教授宅で知り合った判事のとこ
ろへ逃げ、全てを打ち明けたが、信じて貰えず、殺人容疑者として警察に引き渡たされてしまった。
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ハネイは警察署から逃亡したが、右手には手錠を掛けられたままだった。ある政治家の立候補
集会に紛れ込んでしまい、人違いで応援演説をしているハネイを、列車の中でキスしたパメラが
目撃し、2人組の刑事に通報し
た。
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2人組の刑事は、身元確認の証人としてパメラにも同行を求めた。ハネイはこの2人組が
刑
事ではなく、「三十九夜 」
のスパイであることに気づいた。車がジョーダン教授宅へ向かう途中、羊の群れが行く手を塞いだ。2人組は、ハ
ネイの
逃亡を防止するためだと言って、手錠の一方をパメラの手にはめた。
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2人組が羊の群れを追い払うため車外へ出た隙に、ハネイはパメラと一緒に逃げ出した。
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自分のことを殺人犯と疑っているパメラと手錠で繋がったままのハネイは、彼女を脅して逃亡
し続けた。
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ハネイはペンションに泊まることにしたが、ペンションの女将には、自分たちは駆け落ちして
きたので、誰か訪ねて来ても匿ってくれと頼んでおいた。
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夜中。目を覚ましたパメラは手錠を外すことに成功した。彼女が逃げ出そうとした時に、あの
2人組がペンションに訪ねて来た。2人組の会話を盗み聞きしたパメラは、ハネイの言っていたことが真実であると知った。2人組はペンションの女将に追い
出された。
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翌日。パメラは警察に行き、事件の真相を話した。しかし、警察の調べでは防空上の重要秘
密書類は何一つ盗まれておらず、パメラの話は信じて貰えなかった。そして、彼女は警察に尾行されることとなった。
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ハネイは、パメラが2人組から盗み聞きした情報をもとに、ロンドンのパラディアム劇場
へ向かい、劇場の中でジョーダン教授の姿を発見した。
パメラがハネイと合流したが、彼女には警察の尾行がついていたため、劇場は警官に取り囲まれた。
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絶体絶命のハネイ。その時、舞台にミスター・メモリーが登場した。
ハネイはミスター・メモリーを見て、「三十九夜」が企んでいる事に気づいたが…。
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◆ 主な出演者など
・‟サスペンス映画の神様”アルフレッド・ヒッチコック監督が、ジョン・バカンの小説「三十九階段」
を映画化した作品。映画の邦題は、「階段」が「夜」に変えられた。
(右の写真)原作者ジョン・バカン(左)とヒッチコック監督
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・ヒッチコック監督が、ハリウッド進出前のイギリス時代に撮った作品の中で最高傑作とも
評
されている。
英国映画協会が1999年に発表した「20世紀の英国映画ベスト100」で、第4位に選出された。
(左の写真) 左から、ロバート・ドーナット、ヒッチコック監督、
ルーシー・マンハイム(アナベラ役)
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・犯人と間違われた主人公が、逃亡しながらも真犯人を追及する。警察はあまりあてにならな
い。列車内のシーン等々。ヒッチコック監督のお得意の設定が出揃った「ヒッチコック映画の原典」とも言われている作品。
(右の写真)中央の3人。右から、ヒッチコック監督、
ロバート・ドーナット、マデリーン・キャロル
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◆ ヒッチコック監督 お約束のカメオ出演シーン
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・映画が始まって6〜7分頃、主人公と女性がミュージック・ホールから出てバスに乗る
シーンで、通行人役として出演。
(左の写真) ヒッチコック監督の出演シーン
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◆ ピック・アップ … ロバート・ドーナット
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Robert Donat 1905-1958 (イギリス)
・1905年、イギリスのマンチェスター生れ。16歳の時に舞台俳優としてデビュー。
・イギリス映画界の重鎮アレクサンダー・コルダ製作の『Men
of Tomorrow 』(1932年)で銀幕デビュー。翌1933年、コルダが製作・監督、チャールズ・ロートンが主演の『ヘンリー八世の私生活』
での演技で注目を集めた。 |
・『巌窟王』(1934年)でハリウッ
ド・デビューし、イギリスに帰国して出演した
『三十九夜』(1935年)が大ヒット。人気スターの地位を確立した。
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『巌窟王』 |
『三十九夜』
マデリーン・キャロルと |
・フランスの巨匠ルネ・クレール監
督がイギリスで撮った『幽霊西へ行く』(1935年)、同じくフランスの巨匠ジャック・フェデー監督がイギリスで撮った『鎧なき騎士』(1937年)に出演。両作ともアレクサンダー・コルダ製作の作品。 |
・『The Cure for Love 』(1949年)では、製作・監督・脚本・主演をこなした。
・喘息の持病を抱えていたため出演作品は少なく、20本目の映画『六番目の幸福』(1958年)が遺作
となった。
(右の写真)『六番目の幸福』(カラー作品)
イングリッド・バーグマンと
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