20世紀・シネマ・パラダ
イス
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静かなる男
The Quiet Man
監督:ジョン・フォード
(1952年/アメリカ)
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◆ ジョン・
フォード監督の名作ヒューマン・コメディ
アイルランドのキャッスルタウン駅に到着した汽車から1人の男が降り立った。幼い頃に母親
とアメリカへ移住したショーン・ソーントンが、生
まれ故郷に帰って来たのだ。 |
ショーンは子供の頃の彼を知るミケリーンの
荷馬車で生家のあるイニスフリー
村へ向かった。 |
道中、ショーンは羊を追っている美しい女性に目
を奪われた。その後に立ち寄った教会で彼女を見つけたショーンは声を掛けた。女性の名はメアリー・ケイト・ダナハー。
ショーンは一目惚れした…。 |
ショーンは空き家となっていた生家を村の資産家で後家のティ
ランから買い取ったが、この事で、メアリー・ケイトの兄レッド・ウィル・ダナハーに目の仇とされてしまった。その家はダナハー家の地所に隣接しており、レッド・ウィルも手に
入れたがっていたのだ。また、レッド・ウィルはティランに惚れており、彼女が自分よりもショーンを優遇したことも癪に障ったのだ。 |
その夜。ショーンがバーで黒ビールを飲んでいるとレッド・ウィルが絡んできた。危うく喧
嘩になりかけたが、ロナガン神父が仲裁に入り、その場を治めた。 |
ショーンが村で生れた男だと
知った村人たちは彼を歓迎した。ただ一人レッド・ウィルを除いて…。 |
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その夜。ショーンが生家へ行くと、誰もいないはずの空き家の煙突
から煙が出ていた…。 |
ショーンはミケリーンを仲介役にしてメアリー・ケイトにプロポーズし、OKの返事を
貰った。ショーンとミケリーンは改めてダナハー家の家長であるレッド・ウィルにメアリー・ケイトとの結婚を申し込んだが、レッド・ウィルは断固として認め
な
かった。
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村競馬の日。ショーンとメアリー・ケイトのためにミケリーンとロナガン神父が策略を立て
た。レッド・ウィルに、妹を嫁がせればティランが彼のプロポーズを受けるだろうと吹き込ん
だのだ。ショーンが競馬で1着となり、ティランから祝福されているのを見て、レッド・ウィルは妹を嫁がせることを承諾した。
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ショーンとメアリー・ケイトは婚約した。2人はご当地のしきたりに従って、仲介役のミケ
リーン付添いで初めてのデートに出立したが、途中で自転車を見つけてミケリーンを置いてけぼりにした…。
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2人の結婚式が執り行われた。レッド・ウィルがティランとの結婚
を宣言すると、寝耳に水の
ティランが怒って席を外
し、レッド・ウィルは嵌められていたことを悟った。彼は花嫁の持参金の支払いを拒否し、ショーンを殴り倒した。
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殴り倒されたショーンは過去の忌まわしい出来事を夢に見た。アメリカでプロボクサーだっ
たショーンは、試合中に相手を殺してしまったのだった。
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アイルランドでは、女性は持参金と嫁入り道具を携えて嫁ぐのがし
きたりだ。
新婚初夜。メア
リー・ケイトは持参金が手に入るまであなたのものにならないと言って、寝室からショーンを締め出した。
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翌朝。友人たちが家具などの嫁入り道具を届
けてくれたが、持参金はレッド・ウィルが支払いを拒んでいた。
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ショーンとメアリー・ケイトは町へ買物に出かけた。兄の姿を見つけたメアリー・ケイトが
持参金を貰ってくるようにと促したが、ショーンは金などいらないと突っぱねた。メアリー・ケイトは怒って、1人で馬車で帰ってしまった。
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ショーンが持参金の話をつけに行くと、レッド・ウィルは力づくで
来いとばかりに喧嘩を売っ
てきた。ボクシングで相手を殺めて以来、2度と人を殴らないと誓いを立てていたショーンはその場を立ち去った。
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ショーンは、村で自分の過去を知る唯一の人物であるプレイフェア牧師を訪ねて相談した。牧師は、持参金はアメリカ人のショーンが
思っている以上に大事なしきたりであり、メアリー・ケイトのためにレッド・ウィ
ルと闘えとアドバイスした。
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その夜。ショーンとメアリー・ケイトは初めて同じ寝室で夜を過ごしたが、翌朝、メアリー・
ケイトは家を出ていた。恥を忍んで一緒に暮らすのがつらい、とミケリーンに語ったという。ショーンは覚悟を決め、メアリー・ケイトを追って駅へ向かっ
た…。
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『静かなる男』 予告編
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◆ 主な出演者など
・アイルランド移民の子であるジョ
ン・フォード監督が、自身のルーツへの郷愁を込めて、詩情豊かに描いたヒューマン・コメディの名作。1936年に原作の映画化権を取得して以来、
16年かかって念願の作品を撮り終えたフォード監督は、スタッフを前にして、「いつ引退してもいい」と語ったという。
(左の写真)撮影時。左から、ジョン・ウェイン、フォード監督、アーサー・シールズ
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・フォード監督の兄フランシス・フォードも村の長老ダン・トビン役で出演。予算の都合上、
ジョン・ウェインは通常よりも安いギャラで出演した。
(左の写真)撮影時。左から、モーリン・オハラ、フランシス・フォード、ジョン・ウェイン、バリー・フィッツジェラル
ド |
・アカデミー賞では、作品賞、助演男優賞(ヴィクター・
マクラグレン)等、7部門でノミネートされ、監督賞、撮影賞(カラー部門)の2部門で受
賞。リパブリック社にとって、アカデミー賞作品賞にノミネートされた唯一の作品となった。ジョン・フォード監督は史上最多となる4度目の受賞となったが、
授
賞式はいつもの通り欠席し、代理人としてジョン・ウェインがオスカー像を受け取った。
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・強風が吹き込む空き家の中で、ジョン・ウェインとモーリン・オハラがキスするシーンは、
スティーブン・スピルバーグ監督の大ヒット作『E.T.』(1982年)の中でも使用されるな
ど、映画ファンの記憶に残る名シーンとなった。
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◆ ピック・アップ … ワード・ボンド
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Ward Bond
1903〜1960(アメリカ)
・1903年、ネブラスカ州生れ。南カリフォルニア大学時代はフットボール選手として活躍(1931年
卒業)。同校同部に在籍していたジョン・ウェイン(1927年中退)よりも
4歳年上だが、大学では後輩になる。ジョン・ウェインとはエキストラ時代から20作以上で共演し、私生活においても親友だった。
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・大学在学中の1928年からエキストラとして映画に出演。名脇役として、ジョン・フォー
ド、フランク・キャプラ、ハ
ワード・ホークスといった巨匠たちの名作に数多く出演した。てんかんの持病を抱えていたため、主役を避けていたらしい。 |
・生涯で200作以上に出演したが、その内の13作品がアカデミー賞作品賞の候補作品。
・1960年、57歳で他界。葬儀では、ジョン・ウェインが弔辞を述べた。
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