20世紀・シネマ・パラダ
イス
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西部開拓史
How the West Was Won
(1963年/アメリカ)
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◆ 豪華キャ
ストによる西部開拓50年の歴史
1830年代末。北米大陸の西部には、先住民と、狩猟生活を営むごく僅かな
白人しかいなかった時代。
東部の農夫ゼブロン・プレスコットの一家は、夢を抱いて西部開拓の旅に出た。エリー運河から
先は筏でオハイオ川を下る旅だ。 |
ある日、一家は西部から来た山男のライナス・
ローリングスと出会った。彼はビーバーの毛皮を売りに東部へ向かう途中だった。ブレスコット家の長女イヴはライナスに一目惚れして想いを告げたが、
翌朝、ライナスは一人で旅立ってしまった。 |
ライナスは、川岸で店を構える盗賊団の罠にはまり、洞穴に突き落とされてしまった…。
プレスコット一家も盗賊団に全財産を奪われかけたが、後を追ってきたライナスと共に盗賊団を撃退した。
イヴは改めてライナスに愛を告白した。しかし、ライナスは生来の根無し草であり、真っ当な定住生活を送るのは無理だと告げ、去っていった。 |
プレスコット一家は再び川を下ったが、急流に呑み込まれてしまった…。
一家の難を伝え聞いたライナスが駆けつけると、ゼブロンと妻が埋葬されているとこ
ろだった。イヴは両親が眠るこのオハイオの地に留まると言い、ライナスも一緒に定住する決意を固めた。 |
第2話 平原 The Plains (監督:ヘンリー・ハサウェイ) |
1848年にカリフォルニアで金鉱が発見されてから数年が経った頃。
プレスコット家の次女リリーは、都会での生活に憧れ、セントルイスでショーガールとなってい
た。ある日、リリーはご贔屓だった客から金鉱を相続することになり、ロジャー・モーガン率いる
幌馬車隊に加わって、カリフォルニアへ向かうことになった。
ギャンブラーのクリーブ・バン・ベイレンは、借
金で首が回らなくなっていたが、リ
リーが金鉱主になることを偶然に聞き知り、同行を願い出たが追い返されてしまった。 |
数日後、幌馬車隊の後を追って来たクリーブが現れ、護衛として雇われることになった。
リリーはクリーブから言い寄られても相手にせず、ロジャー
からの求婚も断った。
道中、幌馬車隊がシャイアン族に襲われ、クリーブが仲間を助けるため馬から飛び降りた…。
夜、傷だらけのクリーブが戻って来ると、リリーは思わず彼を抱きしめた。 |
リリーとクリーブは漸く金鉱に着いた。だが、金は既に掘り尽くされており、クリーブはリ
リーのもとから去った…。
その後、リリーはカリフォルニアでショーガールとなっていた。ロジャーが訪ねて来て、再び求婚されたが、彼女の気持ちは変わらなかった。 |
一方、クリーブはギャンブルの運に恵まれて一財産を築いていた。彼がサクラメントの川船で
ポーカーをしていると、懐かしい歌声が聞こえて来た。
リリーが川船のサロンで歌っていた。クリーブがプロポーズすると、リリーは受け入れた。2人はサンフランシスコで新生活をスタートさせることを誓い合っ
た。 |
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♬
「牧場の我が家 - A Home in the Meadow 」
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1861年、南北戦争が勃発。オハイオで農場を営むローリングス家では、家
長のライナスが北軍大尉として出征していたが、長男のゼブも志願兵として戦場に向かった。
母親のイヴは、農場の片隅に眠る両親に2人の無事を祈るしかなかった。
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戦場はゼブの想像以上に悲惨だった。1862年4月6日、シャイロー (テネシー州)
の戦いでライナスが命を落とした頃、ゼブは南軍の脱走兵にそそのかされて隊から逃げ出した。2人は、会談中のグ
ラント将軍とシャーマン将軍に出くわし、南軍の脱走兵がグラント将軍を撃とうとしたため、ゼブはとっさに脱走兵を刺し
殺した。
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1865
年、戦争が終結。帰郷したゼブは、両
親が亡くなっていたことを知った。ゼブは父親ライナスの血を色濃く受け継いでおり、一つ所に留まることが出来なかった。彼は農場を弟に託し、正規軍に入隊して西部へ向かうため故郷を後にした。
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第4話 鉄道 The Railroad (監督:ジョージ・マーシャル)
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1860年代後半。東から西へ大陸横断鉄道の敷設を進めるユニオン・パシ
フィック社の工事は、先住民とのいざこざが絶えず、騎兵隊隊長となったゼブは工事を護衛する任務に就いていた。
ユニオン社の指揮官マイク・キングは工事を早く完成させることを最優先にしており、先住民と
の衝突を避けようとするゼブとは反目し合っていた。
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工事を急ぐキングが線路のコースを変更し、狩猟地を荒らされることになったアラパホ族が蜂
起した。
ゼブは父の友人だったバッファロー・ハンターのジェスロ・スチュアートを仲介役に立て、アラパホ族との間で鉄道は通すが狩猟地を荒らさないという平和協定を結ん
だ。
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ユニオン社の工事は、西から東へ工事を進めるセントラル社との競争でもあったためコスト高
を招き、社は既設路線から利益を出すために乗客の運搬を始めた。
乗り込んで来た狩猟者たちがバッファロー狩りを始め、ゼブはキングに抗議したが、止めることは出来なかった。そして、怒ったアラパホ族がバッファローの大
群を町に
放った。
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母親をバッファローに踏み殺されて泣き叫ぶ子供を見て、「あれは泣き声でない。新時
代の叫びだ 」 と言いのけるキング。ゼブは騎兵隊を辞め、山奥で暮らすジェスローに別れを告げて、更に西へと旅立った。
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第5話 無法者 The Outlaws (監督:ヘンリー・ハサウェイ)
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1880
年代末。クリーブはサンフランシスコ鉄道社社長に就任するなど成功を収め、財を築いたが、夫婦での浪費がかさみ、借金を残して亡くなった。遺され
たリリー
は家財を競売に出し、唯一残ったアリゾナの牧場で甥のゼブの家族と一緒に暮らすことに決めた。保安官となり、妻子も得ていたゼブは、叔母のリリーと初め
て顔を合わせた。
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リリーと同じ列車に、無法者のチャーリー・
ギャントが乗っていた。ゼブはかつてギャントの兄を殺しており、恨みを買っていた。ゼブは友人の保安官ルー・ラムゼーを訪ねたが、ギャントとトラブルを起こすなと釘を刺されてしまった。
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ギャントが現れゼブを挑発した。ゼブは、ギャントが大金を輸送する列車を襲うと睨み、妻ジュリーの制止を振り切って決着をつけに向かった…。
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『西部開拓史』 予告編動画
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◆ 主な出演者など
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ブリジット・バズレン (盗賊団の
娘)、 ウォルター・ブレナン(盗
賊団団長)、
デヴィッド・ブライアン (リリーの弁護士)、アンディ・ディバイン (郵
便配達の軍人)、
レイモンド・マッセイ (リンカーン大統領)、アグネス・ムーアヘッド (ゼ
ブロンの妻)、
ハリー・モーガン (グラント将軍)、 セルマ・
リッター(リリーの旅の友)、
ミッキー・ショーネシー (保安官補)、ラス・タンブリン (南軍の脱走
兵)、
スペンサー・トレイシー(ナレーター)
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・1959年、Life 誌が、絵物語 ‟How
the West Was Won ” を数週間に渡って掲載。ビング・クロスビーがタイトルの |
使用権を取得して、2枚組のLPレコードを製作した。クロスビーはTVドラマも製作する予定
で、映像化の権利も取得していたが、これをMGM社に売却。MGM社が雇ったジェームズ・R・ウェッブが、200冊近くの歴史書を読み、脚本を執筆した。
(左の写真) Life 誌 (右の写真) ビング・クロスビーのLPレコード。
同じイラストが使用されている。
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* ジェームズ・R・ウェッブ …『ヴェラクルス』(1954年)、『大
いなる西部』 (1959年)、『恐怖の岬』 (1962年)、『シャイアン』 (1964年)等の
脚本家。『西部開拓史』 でアカデミー賞脚本賞を受賞した。
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・様々な慈善活動に従事していたア
イリーン・ダンが、出演たちに通常よりも低いギャラで出演することを要請し、本作の収益の一部が、Saint John's 病
院等に寄付された。彼女は、本作を一大叙事詩の国民的な映画にするべきだとMGM社に持ちかけた張本人でもあったらしい。
(左の写真) 『西部開拓史』 アメリカでのプレミア試写会時。
左から、アイリーン・ダン、ジョン・ウェイン、ロザリンド・ラッセル、
ジェームズ・ステュアート |
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米国より先に英国で1962年に公開された。米国での一般公開は1963年で、アカデミー賞においても1963年度の作品となった。
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・出演者はアルファベット順にクレジットされた。13人が1人づつ表記された後、10人の
共演者、そして、ナレーターのスペンサー・トレイシーが表記された (上記の通り)。尚、オールス
ター・キャストの『史上最大の作戦』 (1962年) もアルファベット順のクレジットだが、ジョン・
ウェインは特別扱いで最後に表記されていた。(右の写真)
プレミア試写会時。左から、キャロル・ベイカー、ジョージ・ペパード、
デビー・レイノルズ
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・デビー・レイノルズは1、2、5の3話に、ジョージ・ペパードは3、4、5の3話に、
キャロル・ベイカーは1、3の2話に出演した。グレゴリー・ペックは第5話に顔写真が写された。ジェームズ・ステュアートが演じたライナス・ローリングス
が
第3話で死ぬシーンは替玉が演じた (顔は写っていない)。
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・ゲーリー・クーパー (1961年没)
が出演する予定だった。ジェームズ・ステュアートが演じたライナス・ローリングス役だったとの説、カウボーイと無法者の話で主役を演じる予定だったとの説
があ
る。後述の通り、製作途中で脚本が見直されているので、第5話の無法者が完成版とは違うストーリーで、その主役を演じる予定だったのかもしれない。
(左の写真) プレミア試写会時。
左から、キャロル・ベイカー、ジェームズ・ステュアート、デビー・レイノルズ
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・ヘンリー・フォンダ扮するジェスロ・スチュ
アートは、当初はもっと出番の多い役だった。ジェスロの娘も登場し、ジョージ・ペパード扮するゼブ・ローリングスと、リチャード・ウィドマーク扮するマイ
ク・キングと三角関係になるというストーリーだったらしい。ジェスロの娘はホープ・ラングが演じて撮影もされていたが、全て編集でカットされた。
(右の写真) 幻の出演者となったホープ・ラングとジョージ・ペパード
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・アカデミー賞では作品賞を含め8部門でノミネートされ、脚本賞、音響賞、編集賞の3部門
で受賞した。
・AFI (アメリカ映画協会) が2005年に選定した 「アメリカ映画音楽ベスト25」 で第25位に。
(左の写真) ジョン・フォード監督(左) と ヘンリー・ハサウェイ監督
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