20世紀・シネマ・パ ラダ イス
我等の生涯の最良の年
The Best Years of Our Lives
監督:
ウィ リアム・ワイラー
(1946年/アメリカ)
◆
アカデミー賞作品賞など7部門で受賞した大ヒット作品
第2次世界大戦が終結
した。
3人の復員兵、
フレッド・デリー
、
ホーマー・パリッシュ
、
アル・スティーブンソン
が、
故郷の町へ向かう軍 用輸送機に乗り合わせた。
戦地で両腕を失くしたホーマーは家族と婚約者の
ウィ ルマ
に迎えられ、アルは4年ぶりに家族と再会した。フレッドも両親に迎えられたが、出征前に結婚した妻の
マリー
は家を出てしまっていた。
アルは成長した子供たちに戸惑いを覚えたが、気分転換のために妻の
ミリー
と娘の
ペギー
を誘ってナイトクラブへ繰 り出した。
ホーマーはウィルマの家に招待されていたが、気が休まらず、中座をして叔父の
ブッチ
が経営するバーへ向 かった。店にはフレッドがいた。フレッドはナイトクラブで働いているマリーを探していたが、見つけられなかったのだ。
ホーマーとフレッドが再会を喜んでいるところへ、アルの家族も姿を現した。
アルとフレッドが酔い潰れ、ミリーとペギーは2人を自宅を運んだ。夜中、フレッドが戦場で の悪夢にうなされ、ペギーが介抱した。
翌朝。ペギーは前夜の事に触れないでいた。フレッドは、そんな彼女の優しさに感謝し、 好意を抱いた。
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フレッドはマリーのアパートを訪ね、漸く再会することが出来た。アルは勤め先の銀行が用意 していた復員兵向け小口融資担当の重役のポストに就いた。
ホーマーは義手となってしまった事に引け目を感じ、自分の殻に閉 じ籠っていた。そして、ウィルマが示す愛情も哀れみとしか感じられないでいた。
フレッドはより良い待遇の職を探していたが、蓄えが底を突き、夫婦関係に亀裂が生じ始めて い た。不本意ながらも百貨店の香水売場で働き出したフレッドは、様子を伺いに来たペギーを昼食に 誘い、別れ際にキスをした。
アルの復帰を祝う銀行主催のパーティーの日、ペギーはデリー夫妻を食事に招待した。フレッ ドへの気持ちをハッキリさせるためだ。ミリーはペギーがフレッドを愛している事に勘付き、心配をしていた。
マリーが結婚 を後悔していることを知ったペギーは、デリー夫妻の結婚を壊してやると両親に告げた。ミリーが順風満帆に見える自分達にも夫婦の危機が何度もあったと 諭すと、ペギーは泣き崩れた。
アルはブッチの店にフレッドを呼び出し、娘と会うなと釘を刺し た。フレッドは要求を 聞き入れ、ペギーに電話で絶交を言い渡した。
フレッドの職場にホーマーが訪ねて来た。隣にいた客が、「
ア メリカが参戦したのは間違いだった…
」 と言い放ち、憤慨したホーマーが詰め寄った。ホーマー同様、頭に来ていたフレッドは、その客を殴り倒し、職場を解雇された。
別れ際、フレッドは、ウィルマに優しくするようホーマーに助言し た。
その日の夜。ホーマーの自宅にウィルマが訪ねて来た。彼女は、ホーマーを忘れるため引っ越 すことを両親から勧められて いると告白した。ホーマーは自分と生活することの困難さを示して見せたが、ウィルマの変わらぬ愛と覚悟を知り、漸く自分の気持ちを素直に打ち明けることが 出来た。
フレッドが職探しから家へ戻ると、マリーが男を連れ込んでいた。フレッドはマリーから離婚 を言い渡さ れた。
フレッドは心機一転、故郷の町から出ることを決意し、荷物をまとめて飛行場へ向かった…。
『我等の生涯の最良の年』 予告編
◆
主な出演 者など
・
アル・スティーブンソン役
…
フレドリック・マーチ
・
ミリー・スティーブンソン役
…
マー ナ・ロイ
・
フレッド・デリー役
… ダナ・アンドリュース
・
ペギー・スティーブンソン役
…
テレサ・ライト
・
ホーマー・パリッシュ役
… ハロルド・ラッセル
・
マリー・デリー役
…
ヴァージニア・メイヨ
・
ウィルマ役
… キャシー・オドネル
・
ブッチ役
… ホーギー・カーマイケル
・復員兵の社会復帰をテーマとした映画の構想を抱いていた独立系の製作者
サミュエル・ ゴールドウィン
が、小説家のマッキンレー・カンターに物語の執筆を依頼。カンターが書き上げた「
Glory for Me
」 が長すぎたため、
『レベッカ』
(1940年/監督:
アルフレッド・ヒッチコック
)
等の脚本家ロバート・E・シャー ウッドが脚色をした。
・インフレ調整後の興行成績で歴代75位
(2015年現 在)
、ディズニー・アニメを除く実写映画では、1940年代最大のヒット作品となった。
・アカデミー賞では、作品、監督、主演男優
(フレド リック・マーチ)
、助演男優
(ハロルド・ラッセル)
、脚色、編集、劇・喜劇音楽の7部門 で受賞した他、サミュエル・ゴールドウィンがアービング・G・タルバーグ賞、ハロルド・ラッセルが特別賞を受賞した。
(右の写真)左から、サミュエル・ゴールドウィン、ハロルド・ラッセル、ウィリアム・ワイ ラー
・「傷病兵に希望と勇気を与えた」 として特別賞も受賞したハロルド・ラッセルは、演技の経験が無い素人で本当の傷痍軍人であった。
障害者支援に尽力し、本作の34年後に、 『サンフランシスコ物語』
(1980年)
にも出演した。
(左の写真)ハロルド・ラッセル
・ブッチ役のホーギー・カーマイケルは、「スターダスト」、「我が心のジョージア」 といった名曲を作曲した音楽家。
ハンフリー・ボガート
主演の『脱出』
(1944年)
や、日本でも大人気だったTVドラマ『ララミー牧場』
(1959 年)
に も出演。淀川長治さんが同番組の解説を務めたのは、彼が出演していたからだったとか。
(右の写真)左から、ホーギー・カーマイケル、ハロルド・ラッセル、フレドリック・マーチ
・本作で本格的なデビューをしたウィルマ役のキャシー・オドネルは、1948年にウィリア ム・ワイラー監督の兄で脚本家のロバート・ワイ ラーと結婚した。
ウィリアム・ワイラー監督の
『ベン・ハー』
(1959年)
で、
チャールトン・ヘストン
扮するベン・ハーの妹役を演じた。
(左の写真)キャシー・オドネル、ハロルド・ラッセル
◆
ピック・アップ … ダナ・アンドリュース
Dana Andrews
1909 -1992(アメリカ)
・ミシシッピ州生れ。大学卒業後、オペラ歌手を目指してロスアンゼルスへ。様々な仕事を経て、1940年にサミュエル・ゴールドウィン社と契約。
ゲーリー・クーパー
主演の『西部の男』
(監督:ウィ リアム・ワイラー)
で銀幕デビューを果たした。
・
『教授と美女』
(1941年/監督:
ハワード・ホークス
)
、 『牛泥棒』
(1943年/監督:
ウィリアム・A・ウェルマ
ン
)、
『ローラ殺人事件』
(1943年/監督:
オットー・プレ ミンジャー
)
、『影なき殺人』
(1947年/監督:
エリア・カザン
)
、『巨象の 道』
(1954年)
、『条理ある疑いの彼方に』
(1956年/ 監督:
フリッツ・ラング
)
、『エアポート’75』
(1974年)
、『ラスト・タイクーン』
(1976年/監督:エリア・カザ ン)
等に出演した。
『牛泥棒』(1943年)
ヘンリー・フォンダ
(左)と
『ローラ殺人事件』 (1944年)
ジーン・ティアニー
と
『我等の生涯の最良の年』 (1946年)
テレサ・ライトと
『影なき殺人』(1947 年)
リー・J・コッブ
(右)と
『巨象の道』(1954 年)
エリザベス・テイラー
と
『ラスト・タイクーン』 (1976年)
ロバート・デ・ニーロ(右)と
・1963〜1965年まで映画俳優組合の代表を務め、1970年代以降は不動産業でも成 功し た。
・
1992年
、
83歳
で他界。晩年は認知症を患っていた。
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